消費者を復刻版の購入に走らせる“3つの感情”とは?
人々はなぜ復刻版に魅せられるのでしょうか?復刻版を購入してしまう理由には様々なものがありますが、主に3つの感情が消費への影響を与えていると考えられます。
まず、一つ目は『懐古感』になります。過去に慣れ親しんだ商品を店頭で見つけると「懐かしい」という気持ちが湧き上がって思わずその商品を手に取ることは自然の流れといってもいいでしょう。そして、当時の思い出に浸るうちに購入しようという欲求が生まれてくるのです。
また、オリジナルの商品をリアルタイムで購入したことのない若い世代には、懐古感は生まれることはないでしょうが、復刻版が醸し出す『レトロ感』が逆に斬新と感じられ、興味を引く効果も考えられるでしょう。
続いて二つ目は『安心感』です。長引く不況で消費者の予算は段々と少なくなり、消費に関して失敗したくないという気持ちが益々強くなってきています。そこで新しいものに対しては、購入にあたって心理的なハードルが高くなりますが、復刻版であればかつて大ヒットを記録した商品であり、信頼のおけるブランドにもなっているものが多く、安心して購入できるというメリットがあるというわけです。
最後の三つ目の感情は『限定感』です。復刻版は多くの場合、期間や数量を限定して販売されます。そこで、もしすぐさま購入しなければ売切れてしまい、次回はいつ購入できるかもわかりません。「購入したかったのにできなかった」という後悔を避けるためにも、「今購入しておかなければ」という気持ちが購入に走らせるのです。
復刻版を次々とリリースする企業側の事情とは?
復刻版で企業はリスクを低くして成功確率を高めることができる!
復刻版として登場する商品はかつて爆発的なヒットを記録した定番中の定番。そこで、最初から昔を懐かしむファン顧客の需要がある程度見込めるというわけです。マーケティング戦略においては、市場調査を実施して、顧客のニーズを把握し、ニーズに即した新製品を開発して市場に投入しても必ずしも成功するとは限りません。莫大なコストをかけたとしても、失敗する可能性の方が高いといえます。ところが、復刻版の場合は、マーケティングにかけるコストも通常に比べれば低く済み、なおかつ売上も見込めるために、成功の確率が飛躍的に高まってくるのです。
また、復刻版の成功には、かつてのメイン顧客が年齢を重ねて資金的な余裕ができたことも大きく作用しています。たとえば、数年前、もしくは数十年前には予算的にあまりなかった顧客でも時が経てば収入も増え、懐かしい商品を“大人買い”することもできるようになります。価格に対する許容範囲という意味では、復刻版のメインターゲットは確実に高額でも購入する層となっているのです。
加えて、復刻版には新たな顧客層を惹きつける魅力もあります。もともと、顧客の支持を受けてヒットした商品だけに、品質が高く信頼やブランドも確立しているものばかりなので、若い世代にも受け入れられる可能性が高いのです。
企業にとって、復刻版は『懐古感』からかつてのファン客を呼び戻す効果も期待でき、『レトロ感』や『安心感』から新たなファン客を惹きつけることもできる、まさに一石二鳥のマーケティングといっても過言ではないでしょう。
ビジネス環境が益々厳しくなり、失敗が許されなくなった企業にとって、復刻版は益々高い確率で成功につながる切り札になるのではないでしょうか。