マーケティング/マーケティング事例

なぜ、復刻版は人々の心を消費に駆り立てるのか?

最近復刻版がブームになっています。様々な業界で繰り広げられる復刻版マーケティングの背景にあるものとは?消費者の心理的背景と企業のマーケティング上のメリットから復刻版ブームを読み解いていきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

復刻版『エアジョーダン11』を巡る狂想曲
 

エアジョーダン復刻版

一世を風靡したバスケットボールシューズの復刻版が全米を騒然とさせた!

12月23日、アメリカである“復刻版”を巡って大きな騒動が勃発しました。

1995年に発売され、空前のヒットを記録したバスケットシューズ『エアジョーダン11』の復刻版が23日に発売されると、180ドルという高額にもかかわらず、朝早くから多くの顧客が店頭に殺到し、全米で“幻のシューズ”を巡って顧客同士の争奪戦が繰り広げられたのです。

中には顧客同士のいさかいが大きくなり、警察が催涙スプレーを使用して仲裁するも、収まらずに遂には警察官に殴り掛かった少年が逮捕される事件も勃発。また、開店を待ちきれずに店舗の入り口を破壊して逮捕者が出るなど、『エアジョーダン11』の復刻版の販売に際して全米各地で暴動が発生したのです。

それもそのはず、『エアジョーダン11』は、1980年代から90年代にかけて活躍したアメリカプロバスケットボール界のスーパースター、マイケル・ジョーダン氏とナイキ社のコレボレーションで生まれたバスケットシューズで、14シリーズ中、屈指の人気を誇っていたもの。発売当時から最も入手困難であった『エアジョーダン11』が、15年もの時を経て復刻版として、ジョーダン氏が現役時代につけていた背番号と同じ“23”日の発売となれば、ファンならずとも熱狂することは想像に難くありません。

復刻版『エアジョーダン11』を巡る狂想曲は、この機会を逃すまいと多くの顧客が限定商品に群がった結果、起こるべくして起こった騒動といっても過言ではないでしょう。

日本でも続々復刻版が登場
 

復刻版が人々を消費に駆り立てるのは何もアメリカだけではありません。日本でも数多くの企業が復刻版を市場に投入し、“復刻ブーム”に拍車をかけています。

たとえば、日清はカップヌードルの40周年を記念し、『歴代カップヌードル復活総選挙』を実施すると、予想をはるかに上回る187万もの投票が集まりました。この投票結果を受けて、3位までに入った『スパイシーカレー』、『ブタホタテドリ ローストしょうゆ味』、『天そば』を2011年11月から1ヶ月毎にそれぞれを復刻版として販売することを決定し、往年のファン客を喜ばせました。

また、出版業界でも復刻版は大きな注目を浴びています。たとえば、『ドラえもん』などの作品で有名な藤子不二雄氏のデビュー作『UTOPIA 最後の世界大戦』は、現存するものが10冊にも満たず、市場では350万円もの価格で取引される貴重な単行本ですが、小学館クリエイティブは復刻版として現代に蘇らせることに成功。3990円と漫画にしては高額な値段にかかわらず、往年の藤子不二雄ファンのみならず、現代の若者まで惹きつけて、売上を伸ばし続けています。

外食産業では、ファーストフードの雄マクドナルドが、2004年に販売終了した『チキンタツタ』を顧客の熱い要望に応えて2009年に復刻版として限定販売に踏み切ると予想を超える売上に予定していた期間を待たずして販売終了に追い込まれる事態に。この年以降、反響の大きさに応えて、毎年のように期間限定で『チキンタツタ』の復刻版を投入し、顧客の人気を博しています。

次のページでは消費者が復刻版を購入する心理と企業のマーケティング上のメリットに迫ります!
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