植栽で人気物件になり、空室を減らした成功事例
植栽でイメージアップ
私の想像ですが、50代か60代のベテランの一級建築士による設計だったのではないでしょうか。重厚感はあるものの、若い人の好みからは外れたデザインになっていました。それでも新築の間はよかったのですが、築7、8年すると、空室ができた後に埋まるまで2ヶ月、3ヶ月と時間がかかるようになってきたのです。
とはいえ建物はもうできてしまっているので、今さら大幅な変更はできません。そこでオーナーさんが目をつけたのが、植栽でした。このマンションは業界用語で「セットバック」と呼ばれる、道路から建物の入り口までに広い空間を持つ配置になっていました。この空間は最初は単に空いているだけだったのですが、そこに大きなモミの木を植え、さらにきれいな花壇をつくったのです。
費用は20万円程度でしたが、それだけで建物のイメージが大きく変わりました。植物が建物の重厚さを和らげ、訪れる人を緑が迎える、温かな雰囲気が生まれました。オーナーさんの奥さんが、毎年クリスマスシーズンになるとこのモミの木を電飾で飾りつけ、ご近所からも「すてきなクリスマスツリーのあるマンション」と評判になりました。モミの木はこのマンションのシンボルツリーとなったのです。入居者の評判も上々で、1階にテナントとして入っていた美容室の人たちも「感じがよくなった」と喜んでいました。
この植栽の工夫は、入居者からも地域からも歓迎されただけでなく、地元の不動産屋さんにとっても、「近所で評判の、大きなクリスマスツリーのあるマンションです」とインパクトのある売り文句ができたことになり、入居率が大きく改善したのでした。
賃貸経営に成功している「勝ち組」のオーナーさんは、みなさん入居者の心をつかむのがうまいのです。常に入居者のニーズをつかまえようと心がけているからでしょう。