お昼の4000円コースより
・加茂茄子、乾燥貝柱、エメンタール
Melanzane e nocii di capesante secche in zuppetta al emmental
まず前菜として登場したのが「加茂茄子、乾燥貝柱、エメンタール」。最初に口に入れた時には柔らかく、まろやかな泡のクリーミィさが際立ち、その後にチーズの旨味エキスがじんわりと沁み込んだ瑞々しい茄子が口いっぱいに拡がっていく、印象的な仕上がり。そして上に乗せられた乾燥貝柱の深いコクが、より一層全体のテイストを盛り上げてくれるのです。こういった地の食材(加茂茄子)を活かした精密な構成力は実にお見事。ブラヴォー!
・秋刀魚とその肝のソース、無花果とビーツ
Cololabis e salsa di suo fegato con fichi e barbabietola
続いては秋刀魚を使った前菜が登場。秋刀魚は香ばしさを引き出しつつ、旨味を閉じ込めた、しっとりとした焼き具合。そこに肝のソースのほのかなビター感と、無花果の程よい甘味、ビーツのピュレが、全体の味を円やかに調和しながら見事に絡み合う仕上がりです。また、リンゴとリンゴ酢を煮詰めたソースも味わいに繊細なアクセントを付与していて良いですね。
・イカ墨のビーゴリ
Bigoli con nero di seppie
そして待望のパスタ料理! 今回は私がヴェネツィアから帰国したばかりということを意識して、ヴェネツィアの定番である「イカ墨」と手打ちのビーゴリで勝負してくださいました。
今まで(国内外含めて)何度となくイカ墨のパスタを食べてきましたが、これだけ複雑な旨味が舌の上で作用していくテイストのものは初めて。口に入れるとイカ墨の香りに加え、トマトやグアンチャーレから生み出される旨味・甘み、塩加減の調和が秀逸で、とてもエレガントな仕上がりなのです。ヴェネツィアの一般的なイカ墨とはまた違うベクトルで、どこか懐かしい日本の海の香りがする逸品でした。
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