新たなライフスタイルを提案が高評価
居住性を示すモノサシのひとつは広さですが、顕著な傾向として狭小化する住戸面積を、廊下部分の圧縮や可変間仕切りの工夫によって部屋数を確保しつつできるだけ広く暮らす努力が見られるマンションが多かったことがあげられます。これは消費者の所得水準が低下する中、年収500万円足らずでも買える価格に抑えるための、需要拡大手段でもありますが、更に一歩進めて、世帯の少子化・単身化による新たなライフスタイルを提案する狭小プランの登場が待たれるところでしょう。そうした中、最優秀賞に輝いた「中野ツインマークタワー」は、基本スペックやエコ対応、青山ブックセンターと提携したライブラリーなど共用施設の充実ぶりに加え、SI(スケルトンインフィル)を採用し、家族構成の変化などに柔軟に対応することで、快適な暮らしを長期にわたり持続するための可変性の配慮が感じられました。
居住性に対する洞察において一線を画している点が高評価
郊外小規模部門賞になった「パークハウス吉祥寺OIKOS」
さらに、隣家からの視線を避けるためにLDKの窓は住戸ごとに位置も大きさも変え(ポツ窓)ており、常識破りの外観となっていて、全室南面を最大のセールスポイントにする一種住専の一般的な小規模低層マンションとは、居住性に対する洞察において一線を画しています。
また、多くのマンションが先進の機器を駆使して省エネを競う中、「吉祥寺」は外断熱とコンクリート打ち放しという熱効率を高める躯体、住戸単位のセントラルヒーティングと床チャンバー、共用部分の地熱活用などの空調の仕組み等、構造と設備が体系化されたエコ対応を目指している点も評価できます。
更に、コンセプト、ロケーション、ストラクチャーなどの項目で物件をアピールする販促色の強い従来型の物件ホームページとは異なり、設計者、企画担当者自らが「吉祥寺」ができるまでの経緯、物件の特色や物づくりへの考えを淡々と語る、媚びないホームページは、消費者に対して説得力を持っており、有効な販促手法ではないでしょうか。最新のテクノロジーに過度に依存することなく、本質的で普遍性の高い居住性を追求したマンションとして「吉祥寺」が持つメッセージ性を高く評価したいと思います。
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