上澄み吸収価格戦略から市場浸透戦略への修正を余儀なくされた任天堂
マーケティングは『生モノ』。従来の戦略にとらわれずに顧客の変化に合わせて進化させていこう。
ところが、この決定が裏目に出たということなのです。
ここ最近ゲーム市場は急速に様変わりしています。携帯電話やスマートフォンで無料もしくは低価格で楽しめるゲームが無数に開発されるなど、ゲームユーザーには選択肢が格段に多くなってきています。もちろん無料で利用できる数々のゲームは、ヘビーユーザーにとっては物足りないと感じるかもしれませんが、ライトユーザーにとっては既存のデバイスで手軽にできるゲームとして、専用のゲーム機を必要としない理由にもなり、高額な携帯型ゲーム機が売れにくくなった一因にもなっているのです。
任天堂は当初の販売計画の未達に危機感を高め、『様々な打ち手があったのに結局何もできなかったかつてのゲームキューブでの失敗』を教訓に発売から6ヶ月を待たずして40%という異例の大幅な値下げを実行して販売のテコ入れを図ります。
ゲーム機本体は赤字となっても大型ソフトを投入するクリスマス商戦に向けて、この時期にハードの販売台数をできる限り増やしておこうという戦略です。
コアなファン客に対する信頼回復には一層の努力が必要
大幅な値下げの影響で再びニンテンドー3DSが爆発的に売れたのは任天堂の狙いどおりでしょうが、心中穏やかでないのは高い価格で購入したコアなファンではないでしょうか。
まさかわずか半年足らずで40%もの大幅な値下げが実施されるとは予想だにせず、任天堂は最も大切にしなければならない最重要顧客の信頼を大きく損ねた可能性も否定できません。
任天堂は値下げの代償として、高い定価で購入した顧客に対しては無料でゲームがダウンロードできる特典を提供したとはいえ、損をしたと感じる顧客も少なからずいるはずです。
これらの顧客の信頼を回復するにはより一層の努力が必要になってきます。