クリームパンの「神楽坂亀井堂」
中身たっぷりのクリームパンが名物の「神楽坂亀井堂」。実は瓦煎餅と人形焼の老舗でもあることを、ご存知でしょうか。
「神楽坂亀井堂」のルーツは神戸
現在の「神楽坂亀井堂」は、1階がパンとケーキのお店でその裏は工房。2階スペースの半分はレストラン(※2012年7月、パン事業拡大のためレストランを閉店)で、もう半分は瓦煎餅と人形焼の工場です。パンとケーキは神楽坂店でのみ販売され、瓦煎餅と人形焼は主に「上野亀井堂」で販売しますが、神楽坂店にも少量が置かれます。
同店の歴史は遡ること明治時代。神戸にある瓦煎餅の老舗「亀井堂総本店」初代の松井佐助氏が、東京の博覧会出品時に湯島の倉木わかさんに恋をしたのがその始まり。わかさんと結婚すべく明治23年に「亀井堂東京店」(現在の「上野亀井堂」)を開設。後にわかさんの弟に東京店を託し、以来倉木家が東京の店を守っています。神楽坂店は自宅兼工場としてスタートしました。
「神楽坂亀井堂」名物「クリームパン」
瓦煎餅と人形焼の亀井堂が、ケーキとパンも始めたのは約40年前。当初は数寄屋橋にパン屋を構えるなどして販売したそうですが、14年前に神楽坂工場前にパンとお菓子の「神楽坂亀井堂」を開店。以来焼き立てが食べられるようになりました。
名物は、懐かしいグローブ型の「クリームパン」。とにかくクリームたっぷりで、トングでは掴めないのでヘラで取ります。焼き立てはクリームが熱々でトロトロ。パン生地は甘い香ばしさが際立ち、端の方はカリカリ。おおらかな温もりが胃にじんと沁みます。
クリームは冷えるとぷるぷるとした弾力が生まれ、焼き立てとはまた別の食感が楽しめます。滑らかでまろやかで、卵やミルクの素直な香りに心癒されます。
「シュークリームに使うクリームでクリームパンを」という常連さんの声から誕生した「クリームパン」。同店でパンを焼くのはケーキの職人。どうせなら他のパン店にはないようなものをと試行錯誤を重ねたとのこと。今では1日400~500個焼いても早い時間に売り切れてしまうほどの人気です。
「神楽坂を愛する方たちに町の空気と共にパンを持ち帰ってほしい」と店長の倉木育子さん。「愛情込めた焼き立てを、顔の見える範囲でお届けしたい」。今後も手を広げる予定はなく、パンは神楽坂だけで売り続けたいとのこと。