遊びに来た友人が、「これ、知ってる?」と取り出した袋には「のり大福」の文字。いそいそとほうじ茶を入れて頬張ると、甘い大福の後を追いかけるように、青海苔の豊かな香りが広がりました。こんなの初めて、美味しい! と興奮しながら住所を見ると、以前お邪魔したあべ川餅の老舗「餅甚」のすぐ近く。なるほど、海苔で知られる大森らしい大福です。他にはどんなお菓子があるのだろうと気になって、早速お店にお邪魔してきました。

(目次)
P1 大森名物「のり大福」と「麩まんじゅう」
P2 甘くて塩っぱい「みそ饅頭」ほか

大正8年創業「御菓子処 大黒屋」

大黒屋
上生菓子も餅菓子も揃う
「御菓子処 大黒屋」
大正8年創業の「御菓子処 大黒屋」が店を構えるのは東京・大森の旧東海道沿い。現在は、3代目と今回お話を伺った4代目池田栄彦さんが店を守ります。

餡作りから全て2人だけで行っているとのことですが、店には大福やまんじゅう、団子、どらやきなどの親しみやすい和菓子のほか、3代目が得意とする洋菓子、4代目が得意とする上生菓子などが賑やかに並びます。

大森名物「のり大福」

のり大福
石臼でついた餅は、
こしとねばりがありながらも
柔らかい。
大森はかつて海苔の一大養殖産地として栄えた場所。今でも多くの海苔店が集います。そんな土地柄に因んだ菓子を、と10数年前に始めたのが、青海苔を混ぜた餅でこし餡を包んだ「のり大福」。

青海苔入りの一風変わった大福は、当初なかなか買う人がなかったそうですが、今では店の看板商品。知る人ぞ知る大森名物にもなっています。

のり大福
一番人気の「のり大福」
餅米100%でついた餅は、
1日で硬くなる。
中に包む自家製のこし餡は、前に出過ぎず甘さ控えめ。青海苔の香りが溶け込んだ餅の風味を優しい甘さで引き立てます。毎朝店でつく餅は柔らかくのびがあり、とても滑らか。一度食べるとリピーターになる人が多いというのも頷けます。

「のり大福」という聞き慣れない響きにとまどっていましたが、そういえばおはぎや麩まんじゅうにも青海苔を使ったものがあります。初めての味なのにどこかで食べたような親しみを感じたのは、それらの風味と似ていたためでしょうか。

餅米100%で作る大福は、時間の経過と共に少しずつ硬くなっていきます。お店にお邪魔した翌日、食べきれずに硬くなってしまったのり大福を、白みそ仕立てのお雑煮に入れてみました。この食べ方は、香川で知った「あんもち雑煮」を真似たもの。温かい椀から青海苔の香りがふわりと立ち、まったりとした白みその甘みと出汁の旨みが大福にとろりと絡み、なかなか乙な味でした。ぜひ一度お試しを。

青海苔で香りを添えた「麩まんじゅう」

麩まんじゅう
青海苔の香り豊かな
「麩まんじゅう」
冷やして食べるのがお勧め。
「青海苔を使ったものなら、こちらもお勧め。」と池田さんに勧められたのは「麩まんじゅう」。青海苔を練り込んだ生麩で、あっさりとしたこし餡を包み、笹でくるんだ風雅な和菓子です。

笹の清々しさと質の良い青海苔の芳香とが相まって、何とも言えない良い香り。もっちりしていながら瑞々しく、口に入れるとすっと消えていく独特の食感。腹もちが良く気取りのない「のり大福」が日常のおやつ向きなら、あっさりとした品の良い「麩まんじゅう」は、食後のデザートやちょっとしたおもてなしに向いています。つるりとした喉越しの良さを満喫するには、ひんやり冷やして召し上がるのがお勧めです。

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