労務管理/職場でのメンタルヘルス対策

震災後、メンタル不調を高める従業員への心のケア(3ページ目)

震災後1ヶ月以上が経過しました。時間の経過とともに被災地の従業員を中心にメンタルリスクが高まっています。メンタル不調に陥る原因は従業員の置かれた立場・状況によって異なります。メンタルリスクが顕在化しつつある従業員に対する留意点と適切なケアの方法を解説しています。

本田 和盛

執筆者:本田 和盛

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一般従業員のストレスケアも大切

あまり気づかれていませんが、直接の被災地にいない一般従業員のストレスも相当高くなっています。特に関東以北では、震災後1ヶ月以上経っても続く余震や、福島第一原発の放射能漏れによる社会不安などで心が休まる日がないと言っても過言ではありません。

私の周りでも、震災後から体調を悪化させている人が多いです。突然心臓がドキドキし脈拍や血圧が上がったり、吐き気やめまい、頭痛、肩こりに悩まされている人。睡眠が浅くなり慢性的に疲労を感じている人。イライラや漠然とした不安感に悩まされている人。集中力が低下し仕事の能率が悪化している人。症状はさまざまですが、その多くはストレスが原因です。

私も高層ビルで仕事をしていると、常に建物が揺れているような感覚になったり、他人の携帯の着信音や列車の発車音、目覚まし時計の音が「地震速報」のように聞こえ、ハッとすることが多いです。また集中力が低下し、今まで数時間でできた仕事が何日もかかるようになり自分でも驚いています。

ストレスを感じるかどうかは個人差がありますが、特に女性、子供、高齢者は注意が必要です。

急性ストレス反応が持続しているのが問題

大きなショックを受けると、一時的に心身の状態が悪化します。恐怖感や無力感から眠れなかったり、不安やイライラが高まります。ちょっとしたことに対しても過敏になり、その結果集中力が低下します。このような心身の反応を「急性ストレス反応」といいます。

災害や大きな事故などに遭遇すると、人間は本能的に身を守ろうとします。その結果神経が過敏になり、ちょっとしたことに対しても強く反応するようになるのです。これを「過覚醒」といいます。仕事に集中できないのは、集中すると何かあった時に逃げられないからです。「過覚醒」は人間の自然な防衛反応なのです。

しかし「過覚醒」などの「急性ストレス反応」は、1月程度で収まるのが普通です。いつまでもピリピリ、イライラしていては体が持たないからです。今回は地震と津波被害だけでなく、度重なる余震と原発事故が尾を引いているために心と体が平常時に戻らないのです。当然ストレスも蓄積されています。

メンタルリスクに応じた対策を検討しましょう

今回の震災はいろいろな要因が重なって直接の被災者だけでなく、被災地以外の方にも継続的に強いストレスを与え続けています。企業としては、今後半年程度は震災対応のメンタルヘルス対策が必要となるでしょう。

メンタルヘルス対策はリスクマネジメントと同じです。メンタル不調発症リスクの高い従業員、他の従業員への影響度が大きい従業員から対策を講じます。メンタル不調発症リスクの高い従業員は、被災従業員、家族が被災した従業員(特に家族が死亡・行方不明の場合)、救援活動のために被災地に入った従業員や現地従業員です。

次回は具体的な震災対応のメンタルヘルス対策について解説します。


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