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免震構造のマンションを学ぶ<前篇>(2ページ目)

「免震マンション」なる言葉を耳にしたことがないという人は、もはや少数派かもしれない。だいたいどういう構造なのか、も認知されていると思う。しかしながら、それは何でできていて、どういう土地に適しているのか、またデメリットはないのか、などの詳細な情報は持ち合わせていないのではないだろうか。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

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免震装置の役割と耐久性

「桜プレイス」の免震装置

「桜プレイス」の免震装置

免震のメカニズムは、上部(建物)と下部(地面)を連結させている免震装置(支承)が変形することで、地震のエネルギーを吸収(もしくは逃が)し、変形により生じた建物の移動をダンパーが支え、元の位置に戻していくの一連の動きをいう。

さて、専門用語が続いたが、ここでいくつかの疑問が、読者の頭の中に浮かんでいるのではないかと思う。まず、「ゴム」の上に建物がのっているという、その状態がイメージしにくい、果たしてそれは傷まないのか、いざ交換するとなったらどうするのか等々。

まず、ゴムといっても「積層ゴム支承」に使われるゴムは非常に堅固な材質である。他の建造物では、高速道路の内部にもゴムが資材として用いられているようだが、見えない部分だけに、やはり実感はわきにくい。こればかりは実物を触れてみるくらいのことをしなければ納得しづらいだろうが、普段イメージする一般的なゴムとは異次元な性能であることだけは間違いない。

ちなみに、免震マンションで実績のあるブリジストン社製の積層ゴム支承は、東京駅丸の内側駅舎やロサンゼルス市庁舎などでも採用されているものだ。

積層ゴムの耐用年数は60年である。とはいえ、60年後に交換することがあらかじめ決まっているわけではない。劣化状態をみながらの判断になるのだが、建物と同じくらいの、つまり100年程度はもつことも十分可能性としてあるほどの耐久性を有すると考えられている。

免震装置が設置されている場所には、毎年の点検や清掃のための人の出入りはもちろん、万が一の交換時に、建物をジャッキで支え免震装置を入れ替えるための作業スペースが確保されている。いまのところ、その必要性に迫られた事例はまだない。

免震による利点

免震建物の一番の利点は、極めて稀に起こるとされる震度6を超えるような大地震のときに、地震による振動が低減されて建物に伝わることである。これにより、建物が受けるダメージは軽減、損傷する確率が下がる。建物内部における落下物やそれによるけがや損壊も同様。人が地震の揺れに対して感じる恐怖感も小さいと想定できる。

さらに、これはとくにタワーマンションの上層階に住む人に対する利点なのであるが、建物の下層部と上層部の横揺れの幅が、免震構造の場合は、耐震構造の建物ほど大きな差が生じないことである。

また住宅では、次のようなメリットも見逃せない。耐震構造の場合、それ自体の重さと揺れに耐える力の掛け合わせであるため、背が高くなるほどおのずと柱などを太く頑丈にせざるを得ない。必然的に専有空間の隅が大きく室内に出っ張り、居住効率が落ちてしまう。一方、免震マンションは建物に伝わる揺れの力を免震装置で低減させるため、そうしたデメリットを回避しやすい。極端な例でいえば、通常5階建てまでしか採用されない壁式構造が、免震建物なら十数階でも可能になる。居住性に優れた構造工法の許容範囲を拡張する効果をもたらすのだ。

後編へ続く。

【取材協力】
鹿島建設

【素材提供】
桜プレイス

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