高級マンション/高級マンショントレンド

大規模マンションの専有部は魅力的か

近年、大規模マンションが人気である。多種多様な共用施設。安心で便利なセキュリティやサービス。魅力を挙げればきりがない。ところが、肝心の居住空間はどうだろう。共用部同様、スケールメリットはそこにもちゃんと効いているのだろうか。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド

大量供給によって進化した分譲マンション

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首都圏の分譲マンション市場は、年間4万戸程度の供給が妥当ラインであるとされてきた。しかし、1994年を境に、その数は8万戸に膨れ上がる。それまでの倍である。空前のマンションブームは2006年まで、13年ものあいだ続いた。

その間、在庫の積み上がった時期があったりはしたものの、急増した供給数をどうにかこうにか吸収できたのは、住宅ローンの金利が低く抑えられていたからである。加えて、景気変動を見計らってタイムリーに投入されてきた優遇制度の役割も大きかった。時限措置による需要の昂揚は、麻痺しがちな慢性的低金利のお得度を、あらためて実感させる格好の機会となった。

商品企画の向上も見落としてはならない。かつては画一的な印象が拭いきれなかったマンションだが、いまでは先進的な試みはマンションでこそ多くみることができる。断熱性に優れたガラスや家事を軽減するキッチン設備の普及、住宅性能評価書の普及など、規模のメリットを発揮して分譲マンションが住宅業界のなかでもリードしている分野は少なくない。激しい競争が生み出した産物でもある。

「集まって暮らす」付加価値も多様化

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また、商品力強化をいっそう加速させた大きな要因のひとつに、大規模マンションの急増が挙げられよう。あまり目にしたことのなかった数百戸規模の、場合によっては千戸を超すクラスの分譲マンションが続々と誕生したのである。企業の所有する工場やグランドが売り出されたことや駅前などの再開発プロジェクトが活発化したことなどが背景にある。

規模の巨大化は、集合住宅ならではのメリットも巨大にした。一般的な数十戸のマンションではエレベーター、集会室、ロビーの用意がせいぜいなところだが、その10倍20倍の規模となると、異次元の施設が実現可能だ。ゲストルームやパーティルーム、キッズルームにシアタースペースなどである。管理面での効果も大きい。代表的なサービスが24時間の有人管理だろう。こうした付加価値の創出は、コミュニティの活性化、利便性、安心安全を住み手に強く植え付けた。

また、それだけにとどまらず「都心回帰」と「高層化」が要素して加わったことで、大型の付加価値はさらに多様化の様相をみせる。カフェスペースやライブラリーコーナー、スカイラウンジや屋上デッキというふうに。管理人さえもコンシェルジェと呼び名がかわってしまったほど。

大規模なマンションに住むデメリットは管理組合の足並みが揃いにくいことだとされている、がそれを差し引いても魅力が上回っているであろうといわざるを得ないのは、実際の市場での売行きがそれを実証してしまっているからだ。

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