高級マンション/高級マンショントレンド

大規模マンションの専有部は魅力的か(2ページ目)

近年、大規模マンションが人気である。多種多様な共用施設。安心で便利なセキュリティやサービス。魅力を挙げればきりがない。ところが、肝心の居住空間はどうだろう。共用部同様、スケールメリットはそこにもちゃんと効いているのだろうか。

坂根 康裕

執筆者:坂根 康裕

高級マンションガイド


ところが、専有部は?

Image photo

Image photo

さて、ここまで大規模マンションの利点を再確認してきたわけであるが、では、諸手を挙げて推奨しきれるかといえば、やはりそこは個別性によるものとこたえざるを得ない。個別性とは、他ならぬ専有部だ。大規模マンションの真骨頂である共用施設やサービスの見どころは見どころとして消化したうえで、肝心の居住空間はどうなのか、と問わなければ満足のいくマイホームは手に入らない。

例えば高級マンションなどでは、100戸を超える大型億ションと20戸を下回るようなものとでは、後者の方が工夫の効いたものの場合が少なくない。すべての住戸のインフィルをフルオーダーで対応するような高級物件の例を見ても、小ぶりな物件であることが大半。逆にいえば、少ないからこそできるサービスなのであるが。

これは大規模有利な市場になればなる程、小中規模の物件においては、何とか専有部で差別化を図ろうとする傾向のあることを物語っている。スケールが小さいからこそ、希少な建材や設備の採用、設計者が一邸に注ぐことのできる時間などが確保でき、秀逸な居住空間が出来やすいのである。


考えられる理由は何か?

Image photo

Image photo

住宅選びは「変えられないものを優先する」が王道である。立地、環境、向き、眺望、構造、専有面積などだ。これに対して、間取り、専有設備、内装などは変えられるものである。したがって、優先順位は先に挙げたものに比べれば劣るかもしれない。しかし、だからといって何でも良いということにはならない。

たいていリフォームなどは数年住んだあとで行う。新築をいきなり改装する購入者もいないわけではないだろうが、そんな特異なケースを基準に作られているわけではまさかあるまい。

大規模マンションの作り手は、プランを進める過程で、どうしてもその最たる見どころである共用部に意識を集中するきらいがある。総戸数に比例して担当者が増えるわけではないとなれば、おのずと専有部は後手に回らざるをえない。売行きも重要だ。(資産性だけでなく)広告映えのする豪華なロビーやラウンジのしつらえははずしてはならないポイントとなる。

一方、収納やキッチンは生活感の浮き出る部位。暮らしの上では大事なパーツであり、宣伝リストのなかにはたしかに入るのだろうが、供給側が最重要視する一番大きなキャッチコピーになるほどの、販売促進効果を期待するにはやや荷が重すぎるのも事実だろう。

建物の部分部分で異なる設計者を多く登用することも、専有部と共用部が一貫してその住宅ならではの設計思想が形成され得ないことの理由に挙げられるかもしれない。著名な設計事務所が名を連ねていても、エントランスロビーだけであるとか、監修だけをお願いしているとなれば、どうしても住んでいる人の感覚からすれば、全体のバランスがうまくとれているのだろうかという疑問が浮かぶ。

最後に、専有部における冒険的な試みはリスクが大きいということも述べておきたい。万が一のときの対応や交換などを考慮すると大規模は保守的にならざるを得ない。工期に影響する恐れのある凝った仕上げも避けるべきだ。顧客志向の裏返しだという見方も否定はできないのだ。また、分譲事業はスピードとの戦いである。投下した資金をいかに早く回収できるかが成否を分けるこのビジネスでは、ひとつひとつの住戸プランを練り上げる時間はおのずと限られてしまう。

今回は、大規模マンションの専有部の魅力付けを阻む理由を考えてみた。みたのだが、だからといってそういうものだと納得して終わりでは進歩がない。建物のなかで最も長く居る場所が優れているからこそ、そのマンションは高く評価される。

【関連記事】
“邸宅”たり得る高級マンション9つの条件



Copyright(C)2006 MH3 Inc. All rights reserved.

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます