リーダーシップ/リーダーシップ活用事例

「キリン フリー」大ヒットを作ったチームとは(2ページ目)

キリンビールのノンアルコール・ビールテイスト飲料「キリン フリー」は2009年4月に発売されて以来、大ヒット商品として今なお躍進を続けています。いかにしてヒット商品を生み出したのか。リーダーシップの視点から、マーケティング部長(当時)佐藤章さんにお話を伺いました。

藤田 聰

執筆者:藤田 聰

キャリアプラン・リーダーシップガイド


プロジェクトは異種格闘技

アルコール0.00%のビール味飲料「フリー」

ノンアルコール・ビールテイスト飲料「キリン フリー」

ガイド:
会社のトップから「ノンアルコールビールを作りたいね」と言われたのがきっかけで起案してプロジェクト化。最初はやはりプロジェクトとしてメンバーに何か働きかけをされたと思うのですが、その話を聞かせてください。

佐藤さん:
酵母を使えば、微量ですがどうしてもアルコールが残る。でも、ビールテイストのおいしいものを作ろうとしたら、酵母を使わないわけにはいかないことが当然とされていた。「絶対だめか?」「絶対だめです」「じゃどうしようか」という。アルコールゼロ、アルコールが全く入っていなくておいしいものができたら……新しいことはわかっているんですよね。それがお客さまの満足に繋がっていくので。そこで、酵母を使わない製法の開発となるわけです。

「キリン フリー」は本当にアルコールが入っていないので、例えば昼間からも飲んでいい。ちょっと今病気でアルコールが飲めないという人にもいい。メンバーにそういう話をしたら「いいと思います!」って言われて「そうだよな」って思った。確かこういうミーティングが1ヶ月くらい続きましたね。

それから、うまいビールのノンアルコール版のデザイン開発を始めるんですよ。「プロジェクトは異種格闘技だ」とNHK番組『プロフェッショナル』では申しました。色々な才能や価値観を持った人がいることが重要で、ダブりは無駄になる。だから、それぞれの役割に合った違う才能の人たちでチーム編成をした。僕のやり方というのはオリエンテーションシートを作るとかはなく、口頭でイメージを積み重ねていく。あまり明文化しないのです。「それじゃ仕事にならないでしょ」と言われるのですが(笑)。

自然発生的なリーダーの醸成

ガイド:
佐藤さんは、最強チームを作ることにすごくこだわりを持っているように感じる。結局のところ人だよということが根本にあって、キャスティングというか最適な人を引っ張ってきた。そういう人たちと言うのは個性が強いですよね?いわゆる猛獣使いのような感じでしょうか?

佐藤さん:

難しいのは、誰が勝つかということですよね。才能を持った人たちが集まって、ディスカッションをしながら誰が勝っていくのかを見せられるのです。「絶対うまくなきゃいけないんだ、アルコール入れても」という人が勝てば、そういうチームになる。初めからあまり規定や条件をつけないほうが、自由に色々な会議が踊っていきますね。

ガイド:
やっぱりチームを構えて、半ば自然発生的にリーダーができるというか、強い者が勝つみたいな感じでしょうか?

佐藤さん:
そうなりますね。僕の歳で僕の価値観で言うと押し付けになっちゃう。責任持たされて、あるアウトプットを成果として出さなくてはいけませんが、僕らより明らかに他の誰かが考えた方が良いという場合には、だんだんその人に向けて、「あいつが言った方がよくない?」といった周りの流れをつくっていく。この辺はいい加減に見えても、指名されなかった人も納得感はありますよね。「あいつかぁ」というように。

ガイド:
ユニークと言うか、これも佐藤さんの仕事の流儀ですね。

佐藤さん:
人材育成のためにはちゃんとカリキュラムを組んで、ルーチンや研修の様に人材を育成できるフォーマット化をしなければいけないということも必要かもしれませんが、それとはまた違うやり方ですね。

ガイド:
形式を求めちゃうこと自体が、もしかしたらナンセンスのような。再現性というよりも1回性の知というような感じでお話を聞いています。
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