中古マンションブームの到来
「新築希望。だが良いものであれば中古も可」。最近、この言葉をどれほど聞いたろう。新築を扱う営業マンも、かつて自分たちの売ったマンションが、まさかライバルになるとは思ってもみなかったのではないか。並行検討者急増の背景にはいくつかの理由が考えられる。まずひとつは、良質な中古物件が増えたこと。なかでも、1990年代後半以降の都心回帰現象を生んだ、利便性の良いマンション。供給過多時代の商品企画はいまでも評価が高い。
次に、既存物件の売買はそもそも合理的な印象を備えていることだ。建物や眺望、住人の「実際」が確認できる。価格に経費などがのっていないし、交渉の余地が残されている場合も多い。だから満足度高く、後悔の確率も低い。
そして、何よりヴィンテージマンションが善し悪しの見方を変えた。経年ならではの良さを提示したにとどまらず、新築か中古かで判断する前に、住まいに求める普遍的な価値とは何かを世の中に知らしめてくれたのである。
知っておきたい時代の変遷
一方で、このブームは、分譲マンションの年代別特徴を浮き彫りにする。もっとも知名度が高いのは、1981年の耐震基準(建築基準法の改正)である。「旧耐震」という業界用語も、今では広く知れ渡るところとなったのではないだろうか。耐震補強の進捗から類推するに、既存マンションに住宅性能表示制度(2000年施行)の活用が新築のように普及するかは不明だ。修繕積立金の額を見ても、その計画性を疑ってしまうようなケースもいまだゼロではない。さまざまな住宅関連法の制定や改正がマンションの質を時代で色分けしたが、それらが混ざり合うには相当な時間とパワーがかかりそうとしかいいようがない。
これは設備についても同じことがいえる。新しいものを積極的に導入してきた分譲マンションの設備は、中古として買う場合、性能と耐用年数を良くみなければ思わぬ出費に見舞われることになりかねないからだ。