家を購入しようとするときに検討されることの多いテーマが「一戸建てかマンションか」あるいは「新築か中古か」といった比較です。しかし、もし「新築一戸建てを買おう」と決めたときでもそこにはさらに細かな選択肢が待ち構えているため、話はそれほど単純ではありません。
今回は新築一戸建て住宅を探すときや選ぶときに、まず知っておきたい基本的なポイントについて整理しておくことにしましょう。
新築一戸建て住宅の購入パターンは大きく分けて2つ
新築一戸建て住宅を購入、取得するときのパターンはひとつではない
ここでは「土地と建物を合わせて取得する」というケースについて考えてみることにしましょう。
土地と建物を合わせて取得するケースには、大きく分けて「建売住宅の購入」と「建築条件付き土地の購入」の2つがあります。
「建売住宅」とは、売主業者が計画、建築した住宅を「土地付き建物」としてワンセットで購入するものです。購入者が決まって売買契約を締結してから建築工事に着手する場合には、これを「売建(うりたて)住宅」という場合もあります。
一方で「建築条件付き土地」とは、指定業者などとの間で一定期間のうちに建築工事請負契約を締結することを条件として「土地の売買契約」をするものです。この場合、土地については購入者(買主)ですが、建物については工事の注文者(建主)という立場になります。
なお、建築条件付きの契約形態を指して「売建住宅」という場合もあり、「売建」の定義は少しあいまいです。
一戸建て住宅とマンションでは建物の形状がまったく異なりますが、「建売住宅」の購入の流れは新築マンションに比較的近いといえるでしょう。
そのため、新築マンションと新築一戸建ての両方を比べながら購入を検討していた場合でも、建売住宅のときは契約の段取りをスムーズに理解することができます。
それに対して「建築条件付き土地」は新築マンションの場合と違うところが多く、初めてそのような物件に接すると面食らうことがあるかもしれません。
建築条件付き土地は、設計の柔軟性がポイント
建築条件付き土地を購入する場合には、土地に関する売買契約締結後に建物の設計について打ち合わせや見積もりなどをするとともに、指定された期間内(土地の契約後3か月程度のことが多い)に建築工事請負契約を締結することになります。もし、その期間内に建築工事請負契約が成立しなければ、土地の契約は白紙解除されるか、もしくはその契約が初めからなかったものとみなされます。
指定期間内に求められるのは建築工事請負契約の締結であり、建物の設計に関する詳細な打ち合わせなどが請負契約後にまで延びるケースもあるでしょう。
その後、建築確認の申請、建築工事の着手~施工~完成といった過程を経るため、新築建物の引き渡しを受けるまでに土地の購入から1年近くかかる場合もあります。
このとき大事なのは、建物の設計や間取りなどに注文者(土地の購入者)の意向が十分に反映されるかどうかです。
あらかじめ決められたプランの建物しか認められなかったり、土地の売買契約と建物の建築工事請負契約を同時に締結したりするものは、宅地建物取引業法や広告の表示に関する公正競争規約に違反する行為となる可能性が高いため、消費者側でも十分に注意しなければなりません。
また、セレクトプランなどによって設計の選択が可能な場合でも、その選択肢がとても少なく実質的に注文者の意思が反映されないのであれば、やはり問題があるとみるべきでしょう。
なお、建物の設計の段階から打ち合わせをするため、自分が希望するイメージや間取り、設備などについてある程度の知識が求められるほか、それなりの時間も必要となってきます。それらに対して積極的に取り組むことができる人に適した販売形態だといえます。
建売住宅でも設計変更の可能な場合がある
建売住宅では、建築主事(または指定確認検査機関)から建築確認済証の交付を受ければ、着工前でも販売を開始することができるものの、実際には建築工事がある程度進んだ段階で売り出されることが多いでしょう。しかし、建売住宅をいくつか検討していくうちに建築工事着工前の物件が見つかるケースも少なくありません。
着工前の建売住宅を購入するときには、それほど大掛かりではない設計変更などであれば認めてもらえる場合もあります。ただし、建築確認の再申請が必要な場合や、コストアップにつながるものでは、追加費用の負担を求められることもあるでしょう。
また、変更を認めるかどうかはあくまでも売主業者次第ですし、隣接建物との関係などもありますから、「強く要望すれば認められる」というわけではありません。
一方で、工事がある程度まで進む前の段階において、建物の内装や設備などについて購入者による選択や要望を受け入れるような対応をしている建売住宅もあります。
〔着工前、着工後初期の建売住宅購入〕
- 軽微な設計変更であれば受け入れてもらえる場合もある
- 建築の工程を、基礎の段階からしっかりと確認できる
- 慣れていないと完成後の建物のイメージが難しいこともある
- この段階で売り出される物件が多く、早期に検討すれば条件の良い区画を確保できる
- 工事が進むにつれ、完成後の建物をイメージすることは次第に容易となる
- 建物構造部分などの工事を確認できる機会は多い
- 完成した建物の現物をしっかりと確認したうえで購入を決めることができる
- 入居後の生活のイメージを具体的に考えることができる
- 販売開始からの期間によっては、区画の条件が劣る物件ばかりが残っていることもある(ただし、竣工後に全体区画の販売が開始されるケースもある)
- 竣工後の期間経過によっては値引きの可能性もある
- 工事中のときのように内部構造を確認することはできない
物件情報収集方法の違い
新築マンションであれば物件情報を集約したインターネットサイトが多く、物件独自のサイトが開設されるケースも少なくありません。ちょっと手間をかければ、ほとんどの情報は誰でも手に入れることができるでしょう。また、中古住宅(中古一戸建て、中古マンション)であれば、不動産業者間の情報交換システム(レインズ)によってたいていの物件はどの不動産業者でも共通の情報が得られます。
ところが、建売住宅(および建築条件付き土地)の場合にはレインズに登録されない物件もあるほか、売主業者もしくは系列の媒介業者が独占的に「未公開物件」として情報を抱えている例も少なからずあります。
ある程度の規模の分譲であれば新築マンションと同様に情報が容易に見つかるものの、少ない区画の建売物件の情報をすべて得ることはなかなか困難でしょう。
そのため、建売物件に絞って検討をするような場合には、複数の不動産業者に情報提供を依頼するほか、検討エリアの近くに住む友人などがいれば新聞の折り込み広告や地域情報誌などをこまめにチェックしてもらうことも有効です。
インターネットで探すときには「地域名+新築住宅」など、キーワードを組み合わせた検索をすることにより、建売住宅を販売している売主業者のサイトを見つけられる場合もあります。
売主業者は零細から大手まで
新築マンションのデベロッパーも大小さまざまですが、1年間に売るのは1部屋だけというようなところはほとんど存在しません。会社は小さくてもそれなりの事業規模を有しています。ところが建売住宅の売主は、大きな不動産業者から零細不動産業者まで千差万別です。1年に2~3棟売るだけの業者や、条件の良い土地が入ったときだけ数年に1回程度の割合で建売住宅を手掛ける地場の工務店、さらに外部委託の活用などにより実質的に社長1人でやっている建売業者もあります。
しかし、業者の大小によって建物の良し悪しが決まるわけではありません。大切なのはその業者が事業にどう取り組み、顧客に対してどう対応しているかです。
ある程度の規模の業者でも問題を起こすことはありますし、ちょっとした失敗が命取りになりかねない零細業者のほうが真摯に取り組んでいる場合もあるでしょう。
たまにしか建売をやらない地場の工務店が、主業務での高評価を得るために気合のこもった建物を造ることも考えられます。
もっとも、零細業者の場合にはアフターサービスが大丈夫なのかと気になることは否定できません。どのような保証があるのかだけではなく、いざというとき(倒産の場合など)にはどうなるのかについて、事前に十分な確認をすることが必要です。
媒介手数料を事前にしっかりと確認する
新築マンションを購入する場合であれば媒介手数料は不要のケースが大半です。ところが、建売住宅を購入する場合に媒介手数料が必要か不要かはケースバイケースです。売主業者との間で直接(媒介業者が入らずに)契約をするのであれば手数料は不要です。媒介業者が入れば原則として手数料の支払いを求められるものの、売主業者の系列業者などによる媒介では手数料が不要の場合もあります。
また、不動産業者が売主の「代理」の場合には手数料が不要となることが多いものの、必ず不要というわけではありません。
話が少しややこしくなってしまいましたが、いずれにしても購入を決める前の時点で、媒介手数料の有無と金額についてしっかりと確認をすることが必要です。「たぶんいらないだろう」などという思い込みで話を進めることは避けましょう。
違反建築物は少ないが注意は必要
建売住宅ではかつて、建ぺい率オーバー、容積率オーバー、斜線制限オーバーなどの違反建築物がたいへん多い時期もありました。そればかりか、それを購入する消費者の心理として「違反をしていないような狭い住宅は買いたくない」といった風潮すらあったものです。しかし、2003年に国土交通省から各金融機関に対して、工事完了検査に基づく「検査済証」のない建物への住宅ローンの融資を控えるように要請したことや、社会的な意識の変化による検査済証の交付率アップなどもあり、現在では違反建築物がかなり少なくなっているでしょう。
たいていの金融機関は違反建築物に対して住宅ローンの融資をしませんから、違反をすればなかなかうまく販売することができない状況になっているのです。
ところが、完了検査を受けて検査済証をもらってから追加工事をするなどして、床面積を広げた違反建築物が売られるケースがないとはいえないため、注意は欠かせません。
今後の中古住宅市場の整備に伴い、将来その建物を売ろうとしたときに「違反建築物の中古住宅は売れない」といった状況が生まれてくることも十分に考えられるでしょう。
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