今後予想されるiPad vs. Android端末の激しい覇権争い
アップルの快進撃はいつまで続くのか?
このアップルがiPadで築いたブルーオーシャンに波風を立てようとしているのが、グーグルの開発したオペレーションシステムを搭載したAndroid陣営。
2010年11月にはNTTドコモから7インチのタブレット型端末『Galaxy Tab』の発売も予定され、iPadを追撃する準備を着々と進めています。実際に、アメリカでは2010年第2四半期(4月~6月)にAndroidを搭載した携帯端末が27%のシェアを記録し、iPhoneの23%を上回るなどAndroid端末の躍進が目立ってきているのも事実です。
タブレット型端末市場でもAndroid機はiPadを脅かす存在になるのでしょうか?
このAndorid端末の脅威に関して、アップルのCEOであるスティーブ・ジョブズ氏は「DOA(Dead on Arrival)」つまり販売してもすぐにダメになるという過激な予想をしています。
今後タブレット市場で主導権を握るためにはどのようなポイントが鍵になるのか?それぞれの陣営の鍵になるマーケティング戦略を分析していくことにしましょう。
iPadの鍵になるマーケティング戦略
アップルのiPadは既に洗練された魅惑のデバイスですが、今後は自社の他の製品、すなわちMacintoshやiPhone、iPodとの連携を高めて、自社の製品群の相乗効果を発揮していくことにより、さらにプロダクトとしての魅力をアップさせることができるでしょう。具体的にはiPadの次期モデルにカメラを搭載して、現在iPhoneなど他の端末でメインソフトの1つとして売りになっている『Face Time』と呼ばれる誰でも簡単に利用できる無料のテレビ電話システムを提供することによって、顧客に買う理由を付け加えることもできます。
本来の個人ユースばかりでなく、ビジネスユースでの様々な使い方を提案することにより、これまでとは違ったターゲットにiPadを手にしてもらえる可能性も高まってきます。たとえば、最近ではiPadを電子カタログや小さな電子看板、そして変わったところでは回転寿司のタッチパネル式注文システムに活用しているという事例も報告されています。
価格戦略の面からは、無償OSを搭載したAndroid機が最低1万円程度からあることを考えれば、iPadの最低価格の48,800円は消費者の目に高く映るかもしれません。もちろん価格相応のクオリティがあり、1万円のAndroid機は機能面からいえばiPadの足元にも及ばないことは想像に難くありません。
ただ、一般消費者層は価格に敏感に反応することも事実です。現在までに価格をあまり気にしないマニア層が主要な顧客だとすると、これからさらに一般消費者層に購入してもらうためには、より低価格を打ち出す必要があります。もちろんアップルとしてはブランドイメージを守るために、価格をただ単にディスカウントするような低価格戦略は考えていないでしょう。通信キャリアと組んで機器の代金を月々の通信費から回収するビジネスモデルで、よりインパクトのある価格を提供できれば、マニア層から一般消費者層にスムーズに消費の主体が移行することになるでしょう。
最後に流通戦略の面を見ていくと、現状アップルは非常に厳格な流通体制を敷いています。今年の4月には家電量販店のサイトからアップル製品が購入できなくなるという『アップルショック』ともいうべき事態が発生しました。この超強気とも言えるアップルの流通戦略は、現状市場に投入する製品がことごとく当たっている間はブランドイメージを維持するために有効な戦略と言えるかもしれません。今後アップル製品を上回る魅力のある製品が市場に現れた際には、流通パートナーがこぞってそっぽを向いて他社製品の拡販に力を入れる危険性をはらんでいて、アップルのアキレス腱になる可能性も否定できません。一方的に流通網を絞り込むよりは、流通パートナーと良好な関係を保ち、バランスの取れた流通戦略を駆使することも長い目で見て有効なポイントになるのではないでしょうか。