壮絶な統合失調症体験記~
『わが家の母はビョーキです』
幼いころから母の病気と共に歩いてきた作者の告白
慢性化した統合失調症の長い苦しみを記録したエッセイが、中村ユキ著『わが家の母はビョーキです』(サンマーク出版)です。作者の母が若いときに発症し、作者は子どものころから病気の母に振り回されて生きてきました。幻覚が現れては暴力をふるい、自殺を企てる母。世間から孤立した状態の中で、母とたった2人きりで生きてきた作者。ラストには、地域の相談援助機関や新しい家族との出会いによって症状も不安も改善に向かい、家庭にほっとした幸せが訪れます。
統合失調症に限らず、心の病の当事者は孤立してしまうと症状は悪化しやすく、家族は燃え尽きて八方ふさがりになってしまいます。正しい知識に基づいた治療を続け、身近にある社会資源の援助を受け、そして、家族にも正しい病気の理解と対応の知識があれば、重い病気も回復へと向かっていける。そんな基本的なことを改めて教えてくれる1冊です。
心の病気と縁がなくても感動する「メンタル・コミックエッセイ」
以上、おすすめの「メンタル・コミックエッセイ」3冊をお伝えしてきました。これらは、医学事典や実用書では分からない病気の実態、患者と家族の状況がよく伝わる本です。これらの本が伝えたかったのは、闘病生活や病気の内容だけではなく、病気になったからこそわかる大切な人との絆、苦しみや悲しみを共有したからこそ気づくことのできる家族、夫婦の愛情なのだと思います。
心の病気とはまったくご縁のない方も、心が動かされる本です。ぜひ、一度手に取って読まれてみてはいかがでしょうか?