マーケティング/マーケティング事例

プリウスvs.インサイトの仁義なき戦い(3ページ目)

今ハイブリッドカー戦争が熱い!次世代カーとして注目が集まるハイブリッドカーだが、既に激しい価格競争の様相を呈してきた。今回はトヨタとホンダの激しい争いにスポットを当てる!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

トヨタの将来を見据えた戦略とは?

果たしてトヨタの経営陣の視線の先には何が映っているのか?
業界リーダーとして小型車から高級車に至るまでフルライン戦略を取るトヨタとしては、次世代の主戦場となる環境対応車カテゴリーにおいて、チャレンジャーのホンダが先行しているというイメージを消費者に植え付けたくないと考えるのは当然だ。

そこで赤字覚悟でライバル製品と同じ土俵で勝負できる価格帯まで引き下げ、まずは市場を制圧してそれから徐々に収益力を上げていくぺネトレーションプライシング戦略(市場浸透価格戦略)を採用したというわけだ。

このぺネトレーションプライシングは、直接の競合であるインサイトの出鼻を挫くという意味合いもあるが、今後新たに参入してくるであろう世界各国の自動車メーカーに対してエコカーのコストパフォーマンスではトヨタに敵うメーカーはないという圧力をかける効果もある。

ハイブリッド車の開発は困難を極め、現代の技術の粋を集めて開発に取り組んだからと言って、必ずしも成功が約束されるものではない。その開発コストは莫大になることが予想される。それでも十分な利益が上がれば投資も報われるが、現状では市場価格の比較対象がプリウスになれば、開発費用の割には収益が見込めないと参入に躊躇するメーカーも続々現れるはずだ。

つまり、トヨタはプリウスの大幅値下げでハイブリッド車という次世代カー市場に大きな参入障壁を築いたということになるのだ。

かつてのリーダーであるGMが大きく躓いた今、世界の自動車産業を牽引していくのはトヨタに他ならない。「百獣の王は兎を捕まえる時でも容赦なく全力で仕留める」と言われるが、カテゴリーの違うインサイトに対して徹底的に比較した上でプリウスの優位性を強調して販売を促進するトヨタは、正に全力でチャレンジャーを仕留める“百獣の王”そのものだ。

世界的な金融危機の影響でそれまでの好業績が嘘のように不振を極め、尻に火がついたトヨタ。

次世代カーである環境対応車を武器に、今後どのように事業を立て直していくのか?―創業家出身の豊田章男次期社長を筆頭にした新経営陣の経営手腕に注目が集まる。


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