既存ブランドをフル活用するブランドエクステンション
新規事業に参入する場合、実に様々な参入戦略があります。FUJI FILMが化粧品業界に参入するに当たっても、自社で参入するパターンや、化粧品専門の子会社を設立して参入するパターン、化粧品業界の他社に製品を供給して参入するパターンなど、自社の全社戦略に応じて適切なパターンを選択することができます。それでは、なぜFUJI FILMは自社で化粧品業界に参入するパターンを選択したのでしょうか?答えを導いていく前に、まずはブランド戦略について見ていくことにしましょう。ブランドとひとことで言ってもその種類は多岐にわたります。
まずブランドの最上位に位置するのはグループブランドと言って、企業グループ全体を示すブランドになります。FUJI FILMで言えばFUJI FILMグループ全体のイメージを表すブランドになります。次はグループに属する個別の企業のイメージを表すコーポレートブランド。FUJI FILMグループにはFUJI FILMを始めとして、FUJI XEROXなどがありますから、それぞれの企業が持つブランドがこのコーポレートブランドになります。その下には事業毎やカテゴリーごとの事業ブランドやカテゴリーブランドがあり、最下層には商品ブランドが位置することになります。
たとえば、FUJI FILMではフィルム事業やデジタルカメラ事業が事業ブランドやカテゴリーブランドになりますし、『写ルンです』や『FinePix』などが商品ブランドということになります。
ブランドは上のような種類と階層構造をしている。 |
そして、企業はこのようなブランドの階層を勘案しながら、ブランド戦略を構築していくことになります。ブランドの階層という観点からFUJI FILMの参入戦略を見ていくと、今回の化粧品事業では『アスタリフト』という商品ブランドを立ち上げて展開しているものの、その上位ブランドでは新たな企業ブランドを立ち上げることなく、既存のFUJI FILMというブランドで新たに化粧品業界に参入しています。
これは既存のブランドを新規事業に拡げるブランドエクステンションという戦略ですが、既に市場で信頼を得たブランドを新たな市場で活用することにより、スピーディーに顧客の信頼を獲得できるというメリットがあります。
ただ、今回のコーポレートブランドを活用したFUJI FILMの化粧品業界への参入は正解だったのでしょうか?
その検証については最後のページで行っていきます。次ページへお進み下さい!