マーケティング/マーケティング事例

家電量販店戦争でヤマダ電機が仕掛ける次の一手とは?(3ページ目)

家電量販店業界は、業界トップのヤマダ電機が郊外店から都心店への戦略転換を行い、ターミナル駅を中心に激しい争いが展開されています。業界初の3兆円を目標に掲げるヤマダ電機の次の一手は? マーケティング戦略の観点から読み解いていきます。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

事業は、分散型から規模型、特化型へ

さて、このアドバンテージマトリクスを成長戦略へ活用する場合、事業の構造変化のプロセスを知っておく必要があります。

たとえば、事例でお伝えしたように、まずは一店舗のレストランから始まった事業が、繁盛してくると分散型事業のために規模拡大の壁にぶち当たることになります。この壁を超えるためには、業務の標準化を行って多店舗展開できるようフランチャイズ化を実施し、規模型事業に移行することが必要になります。

ただ、このフランチャイズ化も規模が大きくなるにつれ市場が飽和してきます。そこで、次は何かに特化する特化型事業に移行することによってさらなる収益の拡大を図ることができるようになるというわけです。

つまり、事業は一般的に「分散型から規模型へ、そして特化型」という変遷を辿るということができます。

実際に、この事業の構造変化のプロセスを総合スーパーに当てはめて検証してみましょう。まずは「主婦の店」から始まった小さな事業が、日本の高度経済成長の波に乗ってチェーン展開を図って総合スーパー(GMS)へと変貌を遂げます。かつてはその規模で小売業の主役として飛ぶ鳥を落とす勢いだった総合スーパーもバブル崩壊やリーマンショックで失速し、利益を上げることに四苦八苦するようになります。今では復活を賭けてイオンなどは自転車に特化した専門店を出店するなど、特化型の店舗を事業に加えることで新たな道を模索している最中です。

このように、アドバンテージマトリクスを活用すれば、分散型事業は規模型事業に移行することによって、そして規模型事業は特化型事業に移行することによって、成長の壁を越えて収益を拡大していくことが可能になります。

家電量販店業界の成長形態は?

特定層に特化すればまだまだ売上は伸びる。

シニア向けなど、特定層に特化すればまだまだ売上は伸びる

このフレームワークを家電量販店業界に当てはめれば、家電量販店業界は現状規模が大きければ大きいほど収益を上げられる規模型事業ということができます。つまり、ヤマダ電機が今後成長に限界を感じるようなことがあれば特化型事業に移行することにより、さらなる収益の拡大が図れるということなのです。

何に特化するかという切り口の問題はありますが、現代の社会情勢を考えれば、消費意欲が旺盛な女性に特化した店舗を出店したり、蓄えのある高齢者に特化した店舗を出店したりすることによって、更なる成長を実現することができるはずです。

実際に4月にオープンしたLABI新宿東口館は女性にフォーカスした店舗づくりを行っていますので、LABI新宿東口館の業績次第では女性向けや高齢者向け、ファミリー向けなどヤマダ電機が今後さらなる特化型の店舗を拡大していく可能性も高くなるといえるでしょう。
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