感染症の種類と主な病気
顕微鏡が微生物を発見しました! |
呼吸器感染
呼吸器感染は感染防止が難しい空気感染と不織紙マスクなどでも予防可能な飛沫感染に分けられます。■空気感染
空気感染は咳やくしゃみで空気中に放出された病原体が空気中にただようために感染した人がその場にいない場合でも感染力があります。空調の吸気から吸い込まれた空気が別の場所に排気されても感染します。
- 麻疹:麻疹は予防注射により予防可能な感染症です。麻疹に対して安易な解熱剤の投与は危険です。
- 水疱瘡:水疱瘡は誰でも罹る感染症です。再発した場合は帯状疱疹と呼びます。
- 結核 :結核は過去の病気ではありません。自己流の無理なダイエット中の若い女性では免疫状態が落ちて発病することがあります。
■飛沫感染
飛沫感染では咳やくしゃみで放出された病原体は空気中にただよわないので感染した人からの咳やくしゃみを直接吸い込まなければ予防可能です。
- 風邪:風邪は病原体が数百種類あるので何回も感染する呼吸器感染症の総称です。
- インフルエンザ:本来は鳥の病気ですが人も感染します。過去に何回か大流行したことがあります。
- おたふく風邪:流行性耳下腺炎の一般名です。耳下腺だけでなくて男性では精巣上体炎(副睾丸炎)を合併すると男性不妊症の原因となります。
- 風疹:別名は三日麻疹です。妊婦が初めて感染すると胎児の奇形の原因となります。麻疹と風疹の混合の予防接種が実施されています。
- 百日咳:百日咳は百日咳菌によって起きるその名前のように長引く咳を特徴とします。予防注射が実施されていますが免疫記憶が落ちた成人でも発症します。
- マイコプラズマ肺炎:マイコプラズマ肺炎は長引く咳を特徴とします。免疫記憶がつきにくいので何回も感染することがあります。
- 細菌性髄膜炎:細菌性髄膜炎に対して海外では一部の菌に対して予防接種が実施されています。
- 溶連菌感染:溶連菌は正式にはA群β溶血連鎖球菌と呼びます。咽頭炎からいろいろな疾患を引き起こします。特に解熱してから数週間して発症する急性糸球体腎炎が問題となります。
経口感染
経口感染とはいわゆる食中毒だけでなくて病原体で汚染された水による感染症を含んでいます。- コレラ:世界保健機構によると日本もコレラの汚染地域とされています。日本のコレラ菌は毒性が低いので大きな問題となりません。
- A型肝炎:A型肝炎は魚介類が感染源です。短期間の海外旅行で海外で感染した場合、潜伏期間が平均で1ヶ月程度なので帰国後発症することになります。
- ウイルス性腸炎(ノロウイルス含む):ウイルス性腸炎はノロウイルス以外にも複数のウイルスが原因となります。治療では脱水症の予防が重要です。
- 食中毒:原因としてはキャンピロバクター、黄色ブドウ球菌、セレウス菌などがあります。
- ポリオ:ポリオの別名は小児麻痺です。経口の生ワクチンで予防可能ですが、子供の時に生ワクチンを飲まなかった人が生ワクチンを飲んだ子供の便から感染したと考えられる報告があります。
接触感染
接触感染には、直接病原体に触れる事によって起きる場合(直接接触)、病原体を含んだ体液が付着した物に触って起きる場合(間接接触)、その両方の場合があります。皮膚の感染症と唾液を介する感染症と、医原性の感染症を挙げてみました。■口から感染(直接・間接)
直接の意味は口と口が触れた場合、例えばキスをした場合です。間接の意味は唾液から感染する可能性があるのでグラスなどから感染する可能性があります。
- サイトメガロウイルス:母子感染するので、ほとんど人が感染しています。問題となるのは、妊婦が初感染すると胎児に先天性の奇形が起きる事があります。骨髄移植を含む臓器移植後の免疫抑制状態では肺炎などの原因となります。
- 単純ヘルペス:再発することが多い口角炎の原因となります。
- EBウイルス(キス病):キスで感染するので別名キス病と呼ばれています。
- 髄膜炎:髄膜菌性髄膜炎はキスでうつることがある感染症です。
■接触感染
感染症を起こした部位または病原体で汚染された部位に触れたもの(例:タオル、足拭き)から感染します。
- 水虫:最近では女性の水虫が問題となっています。
- トビヒ:小児の皮膚病です。一カ所できると全身に飛び火するように広がります。原因菌は黄色ブドウ球菌とA群β溶血連鎖球菌があります。
- イボ:乳頭腫ウイルスによる病気です。小児ではプールでの感染機会が多くて水イボと呼ばれます。
■医原性感染(院内感染を含む)
感染症にかかる場所の分け方として市中感染と院内感染があります。感染症には感染してから発症するまでの潜伏期間があるので入院後48時間以降の感染症を院内感染としています。
- MRSA:MRSAはメチシリン耐性黄色ブドウ球(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)の略です。院内感染の予防が重要です。
性行為感染症
性行為感染症をどこまで含めるかは議論があるところです。いわゆる性行為感染症とオーラルセックス感染に分けてみました。■性行為感染症
- HIV/AIDS:ヒト免疫不全ウイルス(Human Immunodeficiency Virus, HIV)は、多くの国では感染者数が減少していますが日本では増加傾向です。保健所でHIV検査を受ける事が可能です。
- クラミジア:女性の不妊症の原因となります。
- 性器乳頭腫ウイルス:子宮頸癌の原因となります。ワクチンが開発されています。
- 淋菌:女性では無症状のことが多いのですが男性では膿を伴う尿道炎を引き起こします。
- B型肝炎:潜伏期が1ヶ月から6ヶ月程度あります。ワクチンで予防可能です。
- 梅毒:抗生物質で治療可能ですが血液検査の反応は感染後は陽性のまま持続します。
■オーラルセックス感染
- 単純ヘルペスtype I:単純ヘルペスtype Iは口角炎を起こすので口唇ヘルペスの原因ですが性器ヘルペスの原因にもなります。
- 単純ヘルペスtype II:単純ヘルペスtype IIは性器ヘルペスの原因ですが口角炎の原因にもなります。
- 梅毒:性器からの感染ではなくて口からの感染です。口から喉にかけての感染症を引き起こして耳鼻咽喉科の受診で診断されます。
その他
■垂直感染(母子感染)母子感染を起こす疾患は性行為感染症と重複します。
- HIV:ヒト免疫不全ウイルスの母子感染の予防は可能です。
- B型肝炎:B型肝炎の母子感染も予防可能です。
- 梅毒:胎盤を通じて胎児に感染するので胎盤が完成する前に母体の治療を完了すれば母子感染は予防可能です。
- 成人T細胞性白血病:成人T細胞性白血病は抗体検査陽性の母体からの授乳により新生児に感染します。授乳をしない事により母子感染を予防できます。
- 細菌性心内膜炎:口の中の常在菌(じょうさいきん)の連鎖球菌は全身の感染症は通常は起こしませんが、抜歯後に傷口から血中に入って細菌性心内膜炎という病気を起こします。抜歯後の抗生物質の投与で予防可能です、
感染症にかからないために、私たちにできることは何でしょうか?
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