残業が増えると削られる睡眠時間

働く人の睡眠

残業続きで、眠れていないのでは?

仕事のために眠る時間を削っている人が多くいます。ある調査によると、首都圏に勤務するホワイトカラー全体の4%、都内の銀行員では15%もの人が睡眠時間5時間未満でした。また、ホワイトカラーの男性で、日中に強い眠気を感じている人の割合は、IT 関連業で11.3%、建設業では16.8%という報告もあります。

都会だけでなく地方の労働者も、睡眠に問題を抱えています。総合的な睡眠の評価で、首都圏勤務のホワイトカラーのうち30~45%の人が睡眠に不満があり、富山県の自治体勤務の男性ホワイトカラーでも20%が眠りに満足していません。

時間外の労働時間が増えると、その分、睡眠時間が削られていきます。週40時間勤務で残業がない人は、睡眠を平均7.3時間とっています。これが、残業時間が1カ月に80時間、つまり1日あたり3.5時間では、睡眠時間が平均6時間に減ってしまいます。さらに、残業時間が1カ月に100時間、つまり1日あたり4.5時間になると、睡眠時間は5時間しかありません。

時間外労働による健康障害リスク

残業時間

働き過ぎていませんか?

時間外労働が月に100時間、または直前の2~6カ月間の平均で月80時間を超えると、健康障害のリスクが急激に高まります。

たとえば、7~8時間睡眠の人に比べて、睡眠時間が5時間以下の人は糖尿病の発症リスクが2.5倍に、睡眠時間が6時間でも1.6倍にアップします。これは、忙しくて睡眠不足になった人でも、不眠症のために眠れない人でも、同じ結果でした。

また、徹夜すると翌日の血圧が1日中、10mmHgも高いままになってしまいます。夜更かしして睡眠時間を3~4時間に削っただけでも、翌日の血圧が上がってしまうので、もともと高血圧がある人は要注意です。睡眠と高血圧の関係については、「食事制限だけではダメ? 睡眠と高血圧の関係」で詳しく解説しています。ご興味がある方は、合わせてお読みください。

睡眠不足は、精神の状態にも大きな影響を与えます。不眠症患者の20%はうつ症状を持ち、うつ病患者の70%には不眠がともないます。また、不眠を治療せずほっておくと、不眠のないグループに比べて、うつ病の発生頻度が40倍にもなります。一方、不眠をきちんと治療すればうつ病になる確率が、不眠のないグループとほぼ同じレベルの1.6倍にまで改善します。

残念なことに最近は、過労死や過労自殺が増えています。これらの人々が亡くなる前の状況として、「眠りたいのに眠れない、眠りたいけど眠っていられない」という特徴があります。あなた自身が感じたり、あなたの周りの人がこのようなことを訴えたりしていたら、早めに精神科や心療内科を受診することを強くお勧めします。

さらに詳しい情報をお知りになりたい方は、季節性のうつ病を解説した「冬眠と同じ? 睡眠障害から見る冬季うつ病の特徴」や、睡眠を調整してうつ病を治療する「うつ病にも効果的! 気持ちがハイになる断眠療法とは」、政府によるうつ病対策「政府も本腰! 自殺を予防するための睡眠キャンペーン」もお読みください。

残業中の作業能率は「ほろ酔い状態」

通常の勤務時間であれば、いくらかの波はありますが、さほど仕事の能率が落ちることはありません。しかし、朝、目覚めてから13時間たつと、作業能率が低下し始めます。17時間以上起きていると作業能率は、血中アルコール濃度が0.05%と同じレベルになってしまいます。これは自動車を運転していれば、「酒気帯び運転」と判定されるほどのアルコール濃度です。こんな状態で仕事するくらいなら、さっさと眠って、翌朝早く起きて仕事したほうがよほど効率的ですね。

長く起きていると、ミスも目立って増えてきます。2交代制の看護師を対象とした調査では、12.5時間以上の勤務をしているグループでは、医療ミスの確率が8.5時間未満の勤務群の3倍以上になることが分かりました。これに時間外労働が加わると、時間外労働をしなかったグループのさらに3倍以上もミスしてしまいます。患者さんの命が危険にさらされないために、対策が必要です。

寝不足が続くと、当然、居眠りも増えてきます。睡眠時間が4時間では、1日中とても眠気が強い状態が続き、緊張がゆるむと簡単に居眠りしてしまいます。さらに徹夜明けでは、目を閉じれば数分以内に眠ってしまうことがほぼ確実です。このような状態で、自動車を運転したり危険な作業を行ったりすれば、大きな事故を起こしかねません。

交代勤務での睡眠については、「交代勤務、特に夜勤で働く人の睡眠障害と改善法」で詳しく解説しています。よろしければ、こちらも合わせてお読みください。

快眠で仕事も快調! よく働くためには、よく眠ることが大事

できるビジネスパーソン

グッスリ眠って、バリバリ働きましょう!

元気にしっかり働くために、ぜひ覚えておいていただきたい睡眠のコツをご紹介します。睡眠の専門家が、健康的に仕事に取り組んでいくための提言をまとめ、「働く世代の快眠10カ条」として公開しています。

十分かつ快適な睡眠で、仕事のやる気と効率がアップ
仕事のために睡眠時間を削るというのは、得策ではありません。睡眠不足になると、作業能率が落ちてミスも増えるので、効率的な仕事ができません。煮詰まる前にグッスリ眠って、疲労の回復とストレスの解消をはかりましょう。

睡眠時間は人それぞれ。日中の充足感が快適な睡眠のバロメーター
統計的には7時間前後の睡眠をとっている人が、健康で長生きなのは確かです。しかし一方で、睡眠はとても個性的なものでもあります。自分に必要な睡眠時間と睡眠の周期を知って、充実した快眠ライフを楽しみましょう。自分に必要な睡眠時間をお知りになりたいときは、「結局、何が正解なの?理想の睡眠時間の正しい答え」をお読みください。

朝……目覚めとともに体内時計がスタート。快眠のコツは起床時刻にあり
夜の睡眠の準備は、朝、目覚めたときから始まっています。布団を出たら明るい光を浴びて、体内時計をリセットしましょう。朝食をきちんととれば、胃腸にある体内時計「腹時計」も動き出します。朝が弱い方は、「目覚めが悪い…朝起きられない10の原因と対処法」もぜひお読みください。

昼……わずかな昼寝が午後の仕事効率を高める
ランチを食べたら、午後3時までの間に、10~20分ほどの仮眠をとりましょう。短時間の昼寝は、午後の眠気を減らして仕事の能率をあげてくれます。カフェインは、昼寝の後ではなく前にとっておくと、さわやかに目覚められて、すぐに仕事にかかれます。さらに詳しい昼寝の効用や方法については、「パワーナップ! 午後は20分の昼寝から始めよう」や、「仮眠を制する者は眠気を制す!体得すべき5種の仮眠法」をお読みください。

夜……快適な睡眠は自らの工夫で作り出す
夕方以降は、少し暗めで暖色系の照明のもとで過ごしましょう。コーヒーやお茶などカフェインを含むものは、布団に入る4時間前までに、タバコも眠る1時間前までにしておきましょう。夕方の軽い運動や就寝前のぬるめのお風呂は、寝つきを良くしてくれます。カフェインのとり方についてさらに詳しくお知りになりたい方は、「眠気対策の切り札・カフェインはいつ摂るのがベスト?」をお読みください。

寝る前に……自分なりのリラックス法を見つける
眠れない原因の多くは、ストレスです。眠る予定時刻までの1時間は、自分の好きなことしてリラックスできる時間にしましょう。テレビやパソコン、モバイル端末、ゲーム機、スマートフォン、携帯電話など電子機器の画面は、眠気を減らしてしまうので避けたほうが無難です。なかなかリラックスできない方は、「気持ちを楽にする呼吸法!寝床でできるストレス解消術」も合わせてお読みください。

寝室……眠りやすい寝室環境も大切
理想的な寝室の室温は16~26度、湿度は50~60%です。布団の中と寝室の温度差が大きいと、トイレなどで夜中に起きたときに、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まります。明かりは豆電球のフットライト程度にして、音は図書館並みの静けさを目指しましょう。週に1度は、布団を干して清潔にすることもお忘れなく。理想的な寝室環境については、「睡眠環境・寝室・ベッドの工夫」でも詳しく解説しています。

眠れないときの対処法……眠りは追いかけていくと逃げてゆく
布団に入ってからの考えごとや悩みごとは、眠れなくなる原因です。布団に入って30分たっても寝つけないときは、布団を出て、できれば他の部屋へ行って、リラックスできることをしながら眠たくなるのを待ちましょう。翌朝は寝坊せずにいつもの時刻に起きると、次の夜には寝つきやすくなります。これを発展させた「睡眠スケジュール法」について、「不眠症治療に使われる『睡眠スケジュール法』」でご紹介しています。よろしければお読みください。

それでも眠れないあなたに……早めに医師に相談を
生活習慣や睡眠環境を見直してもうまく眠れないときには、病気のために不眠になっている可能性があります。「いつか行こう」などと先延ばしにせず、早めにかかりつけ医に相談しましょう。診断がつかなかったり、治療の効果が出なかったりするときには、睡眠障害の専門医を紹介してもらいましょう。自分で病院を探すときは、「どこに行けばいいの? 睡眠障害専門医の探し方」を参考にしてください。

交代勤務の工夫……上手な休息と、睡眠時間の確保が大切
夜勤明けにはサングラスなどで強い光を見ないようにして帰り、厚めのカーテンを引いてすぐに眠りましょう。午後3時までには起きて、夜は早めに床につけば、翌朝はスッキリ目覚められます。夜勤中には仮眠をとれるようにしたり、日勤→準夜勤→深夜勤のローテーションに変えたりするなど、職場全体での話し合いも大切です。さらに詳しくお知りになりたい方は、「交代勤務、特に夜勤で働く人の睡眠障害と改善法」をお読みください。
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