断眠療法の高い効果

断眠療法

うつ病患者さんの約6割に効果があります

現在、日本では約100万人の人が、うつ病などの「気分障害」に苦しんでいます。うつ病の治療のゴールデン・スタンダードは、抗うつ薬と休養、それに認知行動療法です。これらに加えて最近では、「断眠療法」が注目を集めています。

抗うつ薬を飲んで抑うつ症状が半分にまで改善するのに、平均で約6週間かかります。ところが、断眠療法を行うと、一晩でそれと同じくらいの効果が期待できます。有効率も高く、約6割のうつ病患者さんで効果を示します。

断眠療法は、うつ病や躁うつ病でだけでなく、パーキンソン病や統合失調症、妊娠中、産後のうつ状態にも有効です。また、月経前不快気分障害も改善してくれます。

ただし、重症のうつ病の方やてんかん患者さんには行えません。さらに、不整脈や狭心症、心筋梗塞がある人は、症状が悪化することがあるので注意が必要です。

断眠療法の種類

断眠療法には眠らない時間の長さなどによって、いくつか種類があります。

一晩、まったく眠らないのが「全断眠療法」。断眠療法中の午前3~4時ごろから、抑うつ症状が急速に軽くなってきます。ただし一度眠るとその段階で効果がなくなるため、断眠療法後に昼寝したり翌日夜に眠った時点で、抑うつ症状がぶり返してしまいます。これを軽減するために、後述するような他の治療法を併用します。また、効果は高いのですが、徹夜すると体への影響も大きいので、短期間に何回も繰り返せません。

「部分断眠療法」は、一晩の半分だけ断眠します。夜の早い時刻に就寝して、午前1~2時ごろに起床するのが「夜間後半部分断眠」。逆に、午前2~3時ごろまで起きていて、そのあと午前7時ごろまで眠るのが「夜間前半部分断眠」です。

部分断眠療法は体への負担が少ないので、1~2日の間隔をあければ繰り返し行えます。うつ病に対する効果は全断眠とくらべて、同じくらいかやや劣ると報告されています。夜間後半部分断眠と夜間前半部分断眠は、どちらも同じぐらいの効果が期待できます。

断眠療法の注意点・副作用

太陽光

屋外に出れば曇りの日でも、1万ルクスの明るさです

断眠療法後には、ある程度の眠気や疲労感、倦怠感が出ます。特に、治療の効果が少ない人によく見られます。2~7%の人で抑うつ症状の悪化が見られますが、多くの場合、軽いものです。

躁うつ病の患者さんでは、11~30%に効果がありすぎて躁状態になることがあります。特に急速交代型というタイプでは、65%の方にみられるので、注意が必要です。

断眠療法は他の治療と組み合わせるのが効果的

断眠療法の効果を高めたり、効果を持続させるために、他の治療法を合わせて行います。

うつ病の患者さんでは、睡眠・覚醒のリズムと、ホルモンの分泌や体温のリズムがずれていることがよくあります。これらの生体リズム(体内時計)を合わせるため断眠療法の後に、夕方に眠って真夜中に起きる「生体リズム位相前進法」を行うことがあります。

強い光には、眠気を減らしたり体内時計を調整したりする働きがあります。これを利用して、断眠療法のあとに6日間、朝夕2時間ずつ、3,000ルクスの強い光を浴びる「高照度光療法」を行うと、断眠療法の効果がその期間中持続します。

うつ病の患者さんでは、薬物療法を行っていたほうが、断眠療法の効果が長く続くことが知られています。ですから、断眠療法中は抗うつ薬を止める必要はありません。ただし、躁うつ病の患者さんでは、断眠療法によって躁状態が強く出ることがあるので、抗うつ薬は使わずに炭酸リチウムを飲んでもらうことがよくあります。

本格的な断眠療法は、専門の医療機関でなければ受けられません。しかし、うつ病まではいかなくても、「ちょっと気持ちが落ち込んでいるなあ」と思ったときには、自宅でプチ断眠療法を行っても良いかもしれません。


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