適正在庫数とは? 生産管理現場で3Sと在庫量を確認
生産管理現場では3S(整理、整頓、掃除)と在庫量を確認する
製造業の現状を把握するには、社長からヒアリングするだけでなく、生産現場を見ることが大切です。生産現場を見るポイントは2つあり、1つのポイントは3S(整理、整頓、清掃)ができているかで、生産ラインに不要な物は置かれていないか、工具類が取り出しやすいところに並べられているか確認します。
※3Sとは整理、整頓、掃除を行うことで、職場環境の美化をはかることが目的ですが、間接効果として皆が生産現場をよく見るようになり、問題点などの顕在化をはかることができます。また業務の効率化、不具合の未然防止、職場の安全性向上などに寄与。3Sに清潔、躾を加えた5Sや日本電産では5Sに作法を加えた6Sを提唱しています。
2つめは在庫量。工程間に仕掛かり在庫が積み上がっていれば、ボトルネックになっている工程がないか調べなければなりません。不良品が多ければ品質に問題があります。
在庫にはお金がかかる
在庫には保管場所が必要となり、火災保険などの経費もかかる
中小企業では、倉庫に在庫が積み上がっている場合があります。生産リードタイムが長い製品は、注文があってから作り始めると納期に間に合わず販売ロス(機会損失)になります。よくとられる方法として、生産リードタイムを短くするため途中まで作っておいた半製品の形で在庫し、注文があると製品化して納品します。
※生産リードタイムとは、資材調達、外注加工、部品組み立て、製品化など製品を作り出すのに必要な時間のこと
品質に問題がある企業では要求された数をすぐに揃えることができず、製品の形で在庫する場合が多々あります。倉庫に在庫が積み上がっている場合は企業の品質管理に問題がないか確認しなければなりません。
具体的には在庫管理システムを点検し、製品が作られた日、在庫として滞留している日数、システム上の在庫数と倉庫の在庫数が一致しているか確認します。先に作った製品から出荷するのが原則ですが、在庫が積み上がっていると取り出すのが大変で現場が守っていない場合があり、時間経過による劣化で不良在庫になってしまいます。実在庫とシステム在庫があわなくなる要因になります。またきちんと生産数を入力していないことも多々あります。
製品をロット生産する場合、注文以上の数であってもロット単位で作る方が生産回数を減らせ、製品1個あたりの製造費用が少なくなります。これで在庫が積み上がる場合もあります。
※「ロット」とは、ひと山、ひとかたまりという意味で、ある製品を一度に生産する製品のまとまりのこと。
いまは、製品の陳腐化が速い時代です。デジタルカメラや携帯電話のように新製品を出しても次々と新しい製品が登場し、前の製品は売れなくなってしまいます。製品を作りすぎてしまえば結局売れずに不良在庫になることに。
在庫を保管するには場所が必要。在庫を維持するには、倉庫賃貸料や火災保険料などの経費がかかります。不必要な在庫は、現金が在庫の形になって寝ていることになり資金繰りに影響を及ぼします。在庫管理システムを使い、きめ細やかな管理を行うのがベストですが、そんな余裕がない中小企業では製品回転率とABC分析で目星をつけましょう。
製品回転率の算出方法
適切な在庫かどうかを判断するのに使われる指標が、製品回転率です。製品回転率は貸借対照表の「製品(商品)」と損益計算書の「売上高」から計算する財務諸表の1つです。製品回転率 = 売上高/平均在庫高 (回転)
製品回転率を計算することで、1年間に製品が何回転したかが分かります。製品を作り販売することによって、製品が売上に変わります。これが1年に1回だけとすると、製品回転率は1回転。製品回転率を計算することで、どのくらいの期間で在庫が販売されたかが分かります。
製品回転率の計算で使う平均在庫高は、期首と期末の製品の平均値を使用。12月31日の棚卸しで期末の製品在庫が4,500万円、期首の製品在庫が3,500万円とすると平均在庫は(4500+3500)÷2で4,000万円となります。売上高が64,000万円とすると、
製品回転率 = 売上高/平均在庫高
= 64,000万円/4,000万円 = 16回転
となり、1年間に16回製品が売れたことになります。
もっと精度を上げたい時は、月末に棚卸を行い、会計システムから試算表データを取り出して、月単位に製品回転率を求めます。これなら変動が多い季節的商品にも対応ができます。
一方、在庫回転率の逆数を求めると、製品が販売されるまでの平均期間(サイクルタイム)を計算することができます。
365日(1年)/16回転 = 22.8125日
平均すると、約23日で在庫がなくなることになります。生産リードタイムが23日より小さい場合は作りすぎると在庫が膨れ上がることになり、反対に23日より生産リードタイムが大きい場合は、在庫の形で持っておかないと販売ロス(機会損失)となってしまいます。もちろん季節変動など、他にも考えないといけない要素がありますが、適正在庫数を判断する1つの指標になります。
ABC分析で重点管理
製品を売上高の多い順にA、B、Cの3グループに分けて管理するABC分析
ABC分析を行って、Aグループの製品を見つけ出し例えば製品回転率を年単位でなく月単位で求めるなど重点的に在庫管理することで会社の利益を確保していきます。
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