発売後50年を経て爆発的ヒットを記録した『人間失格』
数々の名作を残した日本を代表する作家、太宰治。 |
太宰治は1948年に非業の死を遂げますが、直前に書き上げた小説が『人間失格』。社会に馴染むことのできず、この世から消え去りたいと願う男の半生を綴った小説です。主人公のモデルは、著者の太宰治自身ではないかと話題になった名作でもあります。
『人間失格』は1948年に雑誌『展望』に3回にわたり連載され、太宰治の死去後の1952年に新潮社文庫から出版されました。出版後たちまちベストセラーとなり、古典的な名作では夏目漱石の『こころ』とトップを競い合い、これまでに600万部以上の累計発行部数を記録するまでに至っています。さらに、新潮社文庫にとどまらず、1990年には集英社文庫からも初版が出版され、こちらも40万部を超えるベストセラーに……。
ところが、最近、時代を超えた名作にちょっとした異変が起きています。今年の6月に集英社文庫が新装丁で『人間失格』を出版したところ、古典的な名作としては異例の7万5千部をわずか1ヶ月半で売り上げる大ヒットとなったのです。
出版不況が叫ばれる業界で多くの新刊が販売に苦戦するなか、初版から50年以上経過した書籍が1ヶ月半で7万5千部を売り上げるのは、まさに異常な事態です。果たして、なぜ1952年初版の『人間失格』が今また売れ始めたのでしょうか? 調べてみると、背景には出版社の巧妙なマーケティング戦略が隠されていました。そのマーケティング戦略とは……?
集英社が仕掛けた新装丁の狙いとは?
『DEATH NOTE』の作画担当:小畑氏のイラストを採用して爆発的なヒットに! |
『DEATH NOTE』は、名前を書かれたら死んでしまうという死神のノートを手にした主人公の活動を描いた若年層に絶大な人気を誇る漫画で、発行部数は12巻までの累計発行部数で2530万部を超えています。2006年には2部構成で映画化され、大ヒットしたのも記憶に新しいところでしょう。
小畑氏のイラストを採用することにより『DEATH NOTE』のファン層が書店の店頭で『人間失格』の装丁を見るや、小畑氏の新作ではないかという意識を持って手にすることが、今回のヒットに繋がったというわけです。