マーケティング/マーケティング事例

意外!Wiiの真のライバルは○○だった!(3ページ目)

任天堂の次世代ゲーム機Wiiが、遂に発売されました。Wiiは、果たして次世代ゲーム機戦争に勝利し、爆発的なヒットを記録するのでしょうか? 最新のマーケティング戦略の観点から分析してみると、意外な事実が明らかに……。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

コストの引き下げと同時に価値の向上を目指す

それではブルーオーシャン戦略では、どのようにして低コストと差別化を同時に実現していくのでしょうか?

ブルーオーシャン戦略の基本は、 「バリューイノベーション」という概念にあります。バリューイノベーションとは、簡単に言えば「コストを引き下げると同時に価値を向上させていく」ことです。一般的に、同じ業界の戦略を分析すると同じ要素に力を入れている場合が多々あります。たとえば、ゲーム機業界では映像処理能力や非常に凝ったゲームソフトの開発などの要素に力を入れ、他社よりも優れたものを開発しようという戦略が競争を激しいものにしているのです。ここで同業他社が力を入れていることに敢えて力を入れずに、逆に他社が力を入れていないところに力を入れることによって競争を避けることができます。

たとえば、ニンテンドーDSの場合はコストのかかるハードの性能を向上させることに力を入れていません。誰でも楽しめるというゲーム本来の魅力を十分引き出すことに注力し、ハード開発費用というコストを負担すること無しに、より多くの顧客を惹きつけるゲームを提供しました。その結果、顧客にとっての価値を向上させることに成功したのです。

非顧客層の共通点を探る脱セグメンテーション

ブルーオーシャン戦略には、他にも画期的な概念が紹介されています。それは非顧客層に対象を拡大していくという戦略です。これまでのマーケティング戦略では対象を明確に絞り込んで特定の顧客層にフォーカスしていくセグメンテーション&ターゲティングという手法が使われていました。一方、ブルーオーシャン戦略では逆にこれまで自社製品を利用してこなかった非顧客に焦点を当て、なぜこれまで利用してこなかったのかという共通点を探し出すことにより、より大きなマーケットを開拓する足掛かりを掴んで行くのです。

たとえば、ニンテンドーDSではこれまでゲームを利用していなかった層の共通点として「操作が難しい」「ゲームが複雑すぎて楽しめない」という理由に着目。そこでこのゲームを利用しない理由を解消するために、タッチペンによる簡単操作を実現したり、脳トレーニングなどの年配でも単純でわかりやすいゲームソフトを提供したりすることによって、これまで顧客とは考えてこなかった層を取り込み爆発的なヒットを記録することができたのです。

Wiiもブルーオーシャン戦略で新しい境地へ

今回の任天堂が投入した次世代ゲーム機Wiiも、DSと同じくブルーオーシャン戦略を採用して、競争の無い市場を開拓することに挑戦しています。PS3がゲームマニア向けの究極のゲーム機とすれば、Wiiは大衆向けの究極のゲーム機と位置付けることができるでしょう。

果たしてWiiはDSと同じようにゲームに関心の無かった層を取り込んで爆発的なヒットを記録することができるのか? そういった意味でWiiの真のライバルはソニーのPS3やマイクロソフトのXboxではなく、自社のDSと言うことができるのではないでしょうか。
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