マーケティング/マーケティング戦略・基礎編

経営資源を効率的に活用するターゲティング

企業の経営資源を効率的に活用するために、自社の強みに適したマーケットに標的を定めるターゲティングはマーケティングの中でも重要なプロセスとなります。今回は、ターゲティングを実施する際の注意ポイントとそのタイプについて見ていくことにしましょう。

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

企業は限りある経営資源を最大限に活用するために、市場をある条件によって細分化するセグメンテーションを行って、自社の強みが最も活きる市場を見つけ出 していかなければいけません。このプロセスはターゲティングと呼ばれ、ビジネスの対象となる顧客を明確に定めていくことになります。今回はマーケティング 戦略におけるターゲティングの注意ポイントと、その実施方法について見ていくことにしましょう。

ターゲティング実施の際の3つのポイント

ターゲティングでは、対象となる市場の特徴を把握することがファーストステップになる

ターゲティングでは、対象となる市場の特徴を把握することがファーストステップになる

マーケティング戦略において、ターゲティングを実施する際にいくつか注意すべきポイントがあります。

1.細分化した市場で収益が上げられるか
第1のポイントとして、細分化した市場の特徴を十分に把握することが挙げられます。セグメンテーションによって市場を細分化していけばしていくほど、市場 規模は小さくなっていきます。まずは、細分化された市場が自社にとって十分収益を上げられる規模かどうかを見極めなければいけません。

たとえば、売上高が1000億円規模の企業が、セグメンテーションを行ってライバルのいない市場を発見したとしても、その市場規模がたかだか数千万円規模であれば、新たに参入する価値があるかどうかを慎重に検討する必要があるということです。

いくら市場を細分化して、強力なライバル企業が存在しない市場を見つけ出したとしても、市場規模があまりに小さく企業規模にふさわしい収益を上げることが できなければ、参入する意味がありません。細分化された市場において、自社がどのくらいの経営資源を、どのくらいの期間投資して、どのくらいの収益を上げ ることができるのかを予測した上でターゲティングを行うことは非常に重要なポイントと言えます。

ただ、現状は自社にふさわしい収益を上げるために十分な市場規模がなくても、将来的に市場が大きくなる可能性があれば、その成長性を考慮して参入すること も考えられます。今はたとえ数千万円の市場規模でも数年後には数十億円、数百億円の市場規模まで成長することも考えられます。つまり、慎重にターゲットと する市場を分析して正確に成長性を予測した上で、参入の決定を行う必要があるというわけです。

将来性ある市場は今後数多くのライバル企業の参入も考えられるために、市場分析に加えてライバル企業の動向も予測して万全の戦略を立てておく必要もあるでしょう。

2.ターゲット市場で自社の強みが発揮できるか
続いて第2のポイントとして、ターゲットとする市場において、自社の強みが十分に活かされるかどうかを把握しなければいけません。収益を上げるのに十分な 規模、もしくは将来的に高い成長性が期待できる市場でも、自社の強みが全く活かせない市場では、たとえ現状ライバル企業が存在していなくても、いずれその 市場で力を発揮できる後発企業が参入してきた時に、すぐにマーケットシェアを奪われてしまう可能性が高くなります。

たとえば、技術力のあるベンチャー企業が開拓した市場において、その成長性が顕著になれば、経営資源に勝る大企業が後発組として似たような製品やサービス を市場に投入して先行組の芽を摘み取ってしまうという事例は枚挙に暇がありません。自社の強みを知り、その強みを活かして長期的な競争的優位を持続させる ためのマーケティング戦略を事前に立てることができなければ、長期的に収益を上げ続けることは難しくなるというわけです。

3.自社のミッションと市場の整合性があるか
そして最後のポイントは、自社のミッションやビジョンとの整合性が取れたターゲティングを行うということです。企業にとって収益を上げるということは非常 に重要な目的ではありますが、決してそれだけではありません。儲かる市場ということだけでターゲティングを行ってしまうと、自社の社会的な存在意義や目指 すべき方向性とギャップが生じ、長期的に事業を継続することは困難になります。

たとえば、まったく金融事業と関係のない企業が、儲かるという理由だけでターゲティングを行い消費者金融事業を始めることは、顧客や株主、従業員など企業 に関わるすべての関係者に「なぜこの事業を行わなければいけないのか?」という混乱を生じさせる可能性も高くなり、事業全体に悪影響を及ぼす場合も考えら れます。あくまでもターゲティングを行う際は、自社の掲げるミッションやビジョンとの整合性を確認しながら、適切な市場や製品ラインを選択していく必要が あるというわけです。

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