マーケティング理論の歴史

マーケティングの起源は諸説ありますが、近代マーケティング理論は1900年頃のアメリカで誕生したとされています。1900年当時のアメリカは自動車の普及前夜。1908年に発売されたフォード・モデルTは当時としては画期的であった流れ作業による大量生産方式を実現し、価格の大幅な引き下げに成功しました。併せてチャネル・プロモーションなどのマーケティングを実施することにより、単一モデルとしては驚異的な1500万台以上の生産を達成するという空前の大ヒットを記録しました。フォード・Tモデルは正に当時最先端のマーケティング戦略を駆使することによって作れば売れるという状況を創り出すことに成功したというわけです。

日本ではアメリカに遅れること50年。1950年代半ばにアメリカから近代マーケティング理論が輸入されることになります。時は高度経済成長期の始まり。日本でも近代的なマーケティング理論を駆使して大量生産・大量消費の時代に突入することになるのです。

このようにして近代マーケティング理論は製品やサービスを提供しさえすれば売れるという生産者主体のマーケティングからスタートすることになります。

生産・技術志向のマーケティング理論

アメリカのフォード・モデルTや日本の高度経済成長のような需要が供給を大幅に上回る時代に、生産・技術志向のマーケティング理論は誕生しました。この生産・技術志向のマーケティングは生産者が主体となり、生産者がどのようなものを作りたいかという点に重きが置かれることになります。生産者はいかに安く大量に商品を生産するかということに焦点を当て、流通業者はいかに多くの生産者を確保して大量の製品を仕入れるかに注力していきます。もともと需要が供給を上回っていますから、生産された商品は飛ぶように売れ、消費者はその商品を苦労の末手に入れることに満足感を感じるという構図が成り立っています。

たとえば、日本の高度経済成長期では、3Cと呼ばれた「カー」「クーラー」「カラーテレビ」などは生産者が作れば作るほど爆発的な消費を生み、購入者はそれらの商品を手にするだけで優越感に浸ることができたなどというエピソードは、正にこの生産・技術志向のマーケティング理論が通用していた典型的な事例と言えます。