MBAが会社を滅ぼすという事実
2006年世界的な経営学の権威であるミンツバーグ教授の『MBAが会社を滅ぼす』という書籍が日本でも出版され大変話題となりました。同書によれば、業績不振の米国企業のエグゼクティブにおいてMBA取得者の比率は90%にも達する一方で、業績好調の米国企業のエグゼクティブにおいてMBA取得者の比率はわずか55%にも満たないそうです。ビジネススクールでは、経営のプロフェッショナルになるべく英才教育が行われるはずですが、なぜ経営のプロフェッショナルが企業の業績不振を立て直せないばかりか、破滅の道へと導いてしまうのでしょうか?
現在日本においてもビジネスで成果を上げるためにマーケティングなどMBA理論の習得を目指す人が後を絶ちませんが、今回はビジネスパーソンがビジネス理論習得によって陥る罠についてお伝えしていきたいと思います。
理論を学ぶビジネスパーソンが陥りやすい罠とは?
会社を滅ぼすビジネスパーソンの特徴とは? |
この問いに対して、私自身MBA理論を学んで会社経営を行っている経験から言わせていただけば答えは実にシンプルです。
その答えとは「大半のMBAホルダーはビジネスの基本となる“ある重要なこと”を身につけていない」からです。
ビジネススクールは、確かにビジネスのあらゆる難題を解くためのフレームワークを教えてくれます。経営戦略におけるバリューチェーンやファイブフォーシーズ、そしてマーケティング戦略におけるSTPや4Pなど、ビジネスを効率的に勝ち抜く有益な知識を2年間の短期間で叩き込みます。ただ、入学の1つの前提となっているのかもしれませんが、残念ながらビジネススクールではフレームワーク以前にビジネスにとって本当に重要な部分には全く触れることなく、MBAという学位を学生に授与してしまうのです。
ビジネススクールの学生は在籍する2年間、自分の知識を磨き、相手を蹴落としてまでも“自分が成功する”術を身につけていくことになります。特にアメリカのビジネススクールは個人主義的な色合いが濃く、学生は自分の成績を上げることに一生懸命になります。そのような個人主義的な色合いの強いビジネススクールでエリート教育を施されたビジネスパーソンが、MBAという学位を得て、職場に配属されたらどうなるでしょうか?
周りのことも考えない、フレームワークと数字だけに凝り固まった実に頭でっかちなエリートを鼻に掛けた存在となります。ビジネススクールで学んだMBA理論と、それによって導かれる数字だけを重要視してビジネスを展開してしまうのです。
ビジネスは人と人との関係によってのみ発生するという本質を考えると、確かにビジネスの難題を解くフレームワークも重要ですが、それよりももっと重要になってくるのはその知識を駆使する個人の人格や人間性ということなのです。