大きな機会損失を覚悟したマクドナルドの真の狙いとは?
まず1点目は、インパクトを狙ったものと考えられます。1店を閉鎖して改装するだけでは、マスメディアや消費者に対してインパクトは小さいと言わざるを得ません。やはり、地域全体の店舗を閉鎖して同時に新世代店舗をオープンすれば、マスメディアが注目するし、利用者に与える新世代店舗のインパクトも計り知れないものになるはずです。いくら新世代店舗をオープンしても、世の中で話題にならなければ、改修費用を回収することもままなりません。この観点から、渋谷地域の店舗閉鎖はマクドナルドお得意のパブリシティ戦略の一環ということができるでしょう。2点目として、マクドナルドに対する渇望感を高める効果を狙っているのではないでしょうか。今や若者にとってマクドナルドはなくてはならない存在です。多くの若者にとってマクドナルドが「今そこにある」ことは当たり前のことと言っても過言ではないでしょう。
そこで「若者の聖地」である渋谷のマクドナルドを一斉に閉鎖するこで、これまで空気のような存在と感じていた若者が全く利用できなくなります。存在感の大きさを再認識して、これまで以上にマクドナルドにありがたみを感じ益々愛着心が高まる可能性も考えられます。
「マクドナルドが、そこにあるというのは当たり前ではない」ということに気付かせて、今まで以上に“恋愛感情を燃え上がらせる”効果が期待できるというわけです。
最後の3点目として、試験的な意味合いも大きいでしょう。マーケティングとは仮説と検証の繰り返しであり、いったん仮説を立てたら小さな実験を繰り返して全国レベルに広げることが、リスクを最小化する常套手段と言えます。
今回の試みも一地域の店舗を閉鎖してリニューアルすることで、売上にどのような変化が見られるかを詳細なデータを収集分析し、全国レベルでの新世代店舗のリニューアルに役立てる計算です。今後の新世代店舗へのリニューアルは、今回の結果を踏まえて微調整が行われて計画が進んでいくことでしょう。