コーチング/人材育成・組織作り

自発性と応用力を育てるコーチング(4ページ目)

コーチングは従来の人材育成手法の代表格であるティーチングと何が違うのか? その特徴を明らかにするとともに、人材育成におけるコーチングの身近な活用例を紹介します。

平野 圭子

執筆者:平野 圭子

コーチングマネジメントガイド


コーチングを人材育成に活かす

最後にコーチングを人材育成に活かした例を1つ紹介します。

ある会社の新入社員に対する電話対応教育についての事例です。この会社には、先輩社員たちの経験に基づいたとてもよくできた電話対応マニュアルがあります。例年、そのマニュアルを一日かけて暗記させロールプレイをし、現場でもそのマニュアル通りに実施するという、完全なティーチング型で教育を行っていました。効果もあり、その方法は何年も引き継がれました。

あるとき研修担当者が代わり、彼は「電話対応の顧客満足度をもっと上げる方法はないか」と考え、電話対応教育にコーチングを導入することを決めました。彼は問いかけから始めました。

「お客様にとって、どのような第一声、どのようなせりふから始まると印象がいいと思う?」
「どのような雰囲気で会話を終えたら、また電話したいと思うだろう?」
「こんなとき、どのような対応が考えられる?」

このようにして、問いかけ型のプロセスを経て新入社員と一緒にマニュアルを作り変え電話対応を行った結果、顧客満足度調査の数値が格段に上がりました。

この事例からは、答えは同じだったとしても与えられた答えなのか自分の中から導き出した答えなのかによって、取り組み方や成果に大きな差が生まれることが分かります。うまくいかないことをうまくいかせる、できないことをできるようにさせることを越えて、コーチングにはうまくいっていることをもっとうまくいかせるという面もあります。

とはいえ、冒頭で述べたようにコーチングは万能ではありません。今の方法をコーチング型にすべて移行するというのではなく、既存の育成手法と補完するような形でコーチングを取り入れることが現実的かつ、効果的な導入方法です。

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