コーチングとティーチングの使い分け方
人材育成の前にティーチングとコーチングのメリット、デメリットを把握する |
■事例1. 能力、経験値とも十分に高い部下のAさんが重要案件のプレゼンを行う
Aさんには十分な能力と経験があるので、コーチングが最も適しているでしょう。「プレゼンを成功させるポイントは何か」「今回のプレゼンの肝は何か」などを問いかけ明らかにすることで、Aさんの成功イメージをより具体化させ、知識や経験をそこに向けて集中することができます。
ただし、プレゼン相手や案件内容によってはAさんにとって初めての体験になることもあるかもしれません。その場合、ティーチングが必要な部分はないかを確認しておけば安心です。このとき、ティーチング部分を上司であるあなたが必ずしも引き受ける必要はありません。あなたにも経験や知識がない領域だったり、あなたよりもティーチングに適した人材がいる場合は、その人や機関を紹介するといいでしょう。
■事例2. 新しい社内ルールをチームメンバー全員に今週中に徹底させる
新しい社内ルールという彼らの中にはない情報を伝える、一定の内容を全員に等しく身につけさせる、今週中という時間制限があり緊急度も高いことから、まずはティーチングが適しているといえます。しかし、継続してそのルールを実行させるという次のプロセスで、必要に応じて個別に指導をしたり、「なぜそのルールが必要なのか」「そのルールを具体的に実行するには」というコーチング型の問いかけを活用するのも効果的です。
■事例3. プレーヤーとして優秀なスタッフB君を1年でマネジャー候補に育てる
ティーチングとコーチングの合わせ技が有効です。プレーヤーとして実績を出しているので、B君にはすでに現場での経験や物事をうまくいかせる能力がある程度備わっています。
一方、マネジメントという領域での経験や知識、能力は未知数なわけです。しかし、未知数なのであって0(ゼロ)というわけではありません。学生の時、もしくは前職での経験があるかもしれません。1年という時間的猶予もあるのですから、まずはコーチング的アプローチを使ってマネージャーになるゴールイメージを明確にします。それに向けてすでに持っているものや、これから獲得すべきスキルや知識を明らかにし、それぞれティーチング型、コーチング型のどちらで獲得するかを整理します。このとき、マネジャー未経験の彼には見えない視点や領域があれば、必要に応じてティーチングすると効果的です。