華やかな起業家たちに魅せられて
最近、ルーチンワークに流されている・・・そんなとき、ふと自分の生き方に疑問を持ったりするもの。「起業しておけばよかったかも」などという思いに囚われることもあるのでは? |
起業は「危険な賭け」
はっきり言いましょう。安全な起業など、どこにもありません。帝国データバンクのデータによれば、2005年8月の倒産件数は754件。負債総額は3280億5300万円に及んでいます。たった1ヵ月で754件の倒産があるということは、およそ1時間ごとにどこかの会社が潰れているということ。
資金繰りや在庫を抱えるうえでのリスク、社員の教育、税金対策――。起業家の悩みはそれこそ尽きません。数え切れない落伍者たちの中で、生き残れるのはごく一握りだけなのです。甘い考えで起業すれば、あなたはもちろん、家族や社員、取引先までもが大きな痛手を受けることとなります。さて、あなたは起業しておくべきだったのでしょうか?
成功者たちの経歴とは
いったい彼らはどのようにして、事業を成功させたのでしょうか?
たとえば、ライブドアの堀江社長も、創業のころはわりと地味でした。最初は、アルバイトでホームページ作成を始め、やがて7畳一間の事務所から3人でウェブ制作の事業を始めます。それでも当時、海のものとも山のものともつかないインターネットで起業するのには「これが本当にビジネスになるのか」と相当ちゅうちょしたようです。それでアルバイトをしながら、テストマーケティングをしたりしています。
サイバーエージェントの藤田晋氏は、学生時代からアルバイトでありながら、夏の暑い日に毎日100件近い飛び込み営業をしていたと言います。その後、就職したインテリジェンス社でも、毎日終電ぎりぎりまで働き、土日も当然のように出社して仕事をしたそうです。そこで、後に支援者となる宇野社長に出会っています。
楽天の三木谷浩史氏は、ぴかぴかのエリートでした。一橋大学を卒業後、日本興業銀行に入行。ハーバード大学でMBAを取得し、本店でメディア関連のM&Aを担当していました。1995年、興銀を退職し、コンサルティング会社のクリムゾングループを設立しています。
そんな彼も、創業当初は壮絶なまでの忙しさに見舞われます。睡眠時間は、毎日わずか3時間程度だったといいます。こうした日々が続き、ついに嫌気がさした三木谷氏は思い切って方向転換しようと決意。アメリカで広がりつつあったインターネットビジネスに着手しようと思い立ちます。
とはいえ、事業に必要な資金は不足していました。そこで思いついたが、「自分たちが商売するのではなく、商売したい人たちのために場を提供するビジネスをやろう」というアイデア。こうして楽天の前身であるエム・ディー・エムを設立。2002年にはアメリカの経済誌「フォーチュン」の若手富豪ランキング6位に選ばれるまでになったのです。
成功は辛抱と失敗の果てにある
彼らの経歴に共通しているのは、「入念な準備期間」と「辛酸を嘗めた時期」を経ていることです。堀江氏はアルバイト時代、がむしゃらに仕事をし、創業してからも自分の技術に磨きをかけ続けました。資金繰りに追われ、他の企業が華やかなビジネスモデルをぶち上げている時代に、日銭を稼ぐために、ウェブ制作や、ウェブホスティングなどの事業に精を出したと言います。そんな彼でも、上場した当時は、初値がつかず、苦しんでいるのです。
三木谷氏は銀行で経営学を学び、自らの起業に生かしています。しかし、最初の会社を興した後、サラリーマン時代どころではない忙さに苦しみました。おそらくそれは創業者として「一皮むける」ような体験だったに違いありません。
これは前出の二人に限りません。たとえばファーストリテイリングの柳井正氏も「10回のうち9回は失敗する。その失敗に蓋をするのではなく、財産と考えて次に生かす」という名言を吐いています。その言葉どおり、辛抱と失敗の繰り返しが、成功へとつながるのです。さて、いかがでしょう。会社に勤めるより、さっさと起業しておくべきでしたか?
大企業は起業家の学校だ!
もしもあなたが「今からでも起業したい」と固く決意しているのなら、さっそく準備を始めることをお勧めします。とはいっても、会社をいきなり辞めてしまうのは得策ではありませんし、危険です。企業に勤めていれば、職場には勉強のための材料がいくらでも転がっているからです。
金融機関に務めていれば、おカネの流れをつかむことができます。銀行、会計事務所、転職支援会社や人材コンサルティング会社なら、普通は会えない経営者などと直接会う機会も多いでしょう。このほか、どんな業界でも深く研究すれば、起業に使える専門知識はいくらでもあるに違いありません。自らを「起業準備中」と位置づけたとたん、嫌々やらされている目の前の仕事は宝の山と化すのです。
準備を重ねたらいきなり起業するのではなく、まずは週末起業から始め、感触を確かめるとよいでしょう。「本業で忙しくてそれどころじゃない」などという人は、その時点で起業家失格。起業すれば自分の時間管理は自分でおこなわなくてはなりません。忙しい合間に時間を作り、ビジネスをやっていけるようでなくては、成功はおぼつきません。
さて、いかがでしたか。起業の道はけっして平坦ではありません。しかし、もしも一歩を踏み出す覚悟があるなら、まずは足元を見つめ、できることから始めてみてはいかがでしょうか。