【第1回】出版企画は、誰がどのように立てているのか?
【第2回】売れる本の3要素とは
【第3回】何をテーマに書いたら売れる?
【第4回】出版社は、どうやって書き手を見つけているのか?
【第5回】出版社へ売込む方法!?
「売れる本の書き方講座」第5回目です。前回は、「出版社はどうやって売れる新人を探しているのか?」という疑問に対して、“メルマガが新人発掘の宝の山”になっているというお話をお伺いしました。『まぐまぐ!』から、続々と『本』になっているのも、納得です。
サイト上へ連載を書いたり、メルマガを発行して読者を獲得。そして、編集者に見つけてもらうのをじっと待つ、というのも1つです。
しかし、もっと積極的に「チャンスは自分でつくる!」、「是非本にしたい企画がある」という方には、“出版社へ直接売込む”という方法があります。
今回は、その売込み方法について、出版社サイドの視点からアドバイスをいただきます。
<INDEX>
・出版社への売り込み、どうやって…?
・「企画書」を書いて出版社へ送る
・編集者は「企画書」のどこをチェックするか
・ジャンルによって出版社を選ぶ
・質議応答タイム
<大森千明氏プロフィール>
1971年朝日新聞入社。経済記者としてスタート。95年にアエラ編集長。その後出版部門に移り、週刊朝日編集長を務める。2001年1月朝日新聞の出版部門を統括する出版本部長に就任。03年2月から出版担当付。03年4月から、帝京平成大学非常勤講師。著書に『不自由経済』『嵐の中のサラリーマン』(いずれも共著、朝日新聞社刊)等がある。
出版社への売り込み、どうやって…?
出版社の編集者には毎日のように「出版企画」が持ち込まれます。中には、頼んでもいないのに、直接、郵便や宅配便で原稿を送りつけてくる人もいます。ほとんど「イイものを書いたので御社で出版してほしい!」という内容です。読んでダメなら、原稿を送り返してくれ、と添えてあります。だいたい、編集者にはこんな依頼に応じる義務はありません。忙しいのに、何百枚もある原稿を読む作業は大変です。誰だって、こんな失礼な相手は無視します。ほとんど読まないで、捨てるか、そのまま送り返すことになります。
自分の原稿にいくら自信があっても、このやり方ではダメです。一番よい方法は、知り合いに出版社の編集者を紹介してもらうことです。
「企画書」を書いて出版社へ送る
知り合いなどいない、という場合は、原稿の中身を分かりやすく、簡潔にまとめた「企画書」を書き、出版社に郵送する手があります。原稿の一部や、さわりを添えておく方がいいでしょう。形式が整った、ちゃんとした企画書なら、編集者はまず目は通します。ひょっとして、「金の卵かもしれない」という思いにかられるからです。■出版企画書の項目(※第1回目/出版会社の企画書を参照。)
・タイトル(案)
・出版の目的(なぜ今? 今やればどんな意味があるのか)
・著者の経歴(出版経験がある場合/書名、販売部数)
・読者対象(なるべく具体的に)
・内容要旨(分かりやすく)
・セールスポイント(読者にアピールするポイントとして何があるのか?)
原稿を書く前に、「企画書」だけを送り、出版の可能性があるかどうか判断してもらうやり方もあります。採用される見込みがないのに、原稿だけを書いていくのも大変です。企画書を読んで「おもしろそうだ」となれば、サンプル原稿を送ってほしい、とか「お会いしたい」といった返答が編集者からきます。
編集者は「企画書」のどこをチェックするか
では、編集者が、皆さんから送られてきた「企画書」のどこをチェックするか。例えば、目の前に企画書が置かれている、とします。編集者がまず、読むのがタイトル(※売れる本の3要素)です。つまらなければ、それで終わりです。とはいえ、素人が気のきいた題名を思いつくのは至難の業かもしれません。で、どうするか。要旨が重要になります。とにかく分かりやすく。自分では分かっていても、他人が読むとさっぱりということが多いものです。場合によっては、箇条書きでもかまいません。
それと、何を強調したいのか。何が売りモノなのか。そこに全力投球してください。類書を調べて、その違いを書いておくのも悪くはありません。
要旨についやす枚数はA4サイズ1枚で全く問題はありません。せいぜい2枚。あまり多いと、それだけで内容が散漫だと思われてしまいます。
もう一つ、サンプル原稿をつける場合の方法です。「こんな感じの内容」というのが分かればいいのですが、問題はどの部分を付けるかです。
「出だし」と思われる人が多いのですが、いちばん面白そうな部分を原稿にすることをお勧めします。逆に言うと、一番おもしろい、ハイライトを書き出しにするということです。大量に書く必要はありません。400字詰めで5枚もあれば十分です。
ただ、「企画書」を送っても、持ち込まれる企画が多いこともあって、連絡がくるまで1、2ヶ月、場合によっては数ヶ月かかることも珍しくありません。すぐには返事はきませんので、まあ、果報は寝て待て、ということになります。
あとは「出版したい」という熱意が編集者に伝わるかどうかもポイントです。出版不況とはいえ、編集者も人の子です。ライターと編集者との関係は一面恋愛関係みたいなものだ、という人がいました。「惚れてしまったら弱い」ということでしょう。熱い想いが伝って、お付き合いが始まればチャンスです。
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