「論理的な思考」が必要になってきた!
---SEの方が使う図解技術は、IT業界に限らず一般業務の人にも必要だ、と著書の中で書かれていますが。SEに限らないのはなぜか?というと。では、ちょっと質問です。最近、ロジカルシンキングが流行してますね。なぜでしょう?
例えば、次のような場合に必要なんです。
・「こうしましょう!」と主張する時
・「一体これはなぜ、どこに問題が?」と、問題解決をする時
主張する時には理由が必要です。問題解決の時は、どこに原因があるのか、探っていく謎解きが必要です。どちらも、勘とかではなく、ちゃんとした合理的な理由が必要なんです。
これをやるために重要なことは2つです。
・その問題の構造を知ること
・合理的な理由付けをすること
合理的であることの必要条件っていうのは、つじつまが合っていることと、もれダブリがないことです。これをやるための便利な道具が、図解技術なんです。
結局現代というのは、何かやる時にはいろんな人を動かさなくちゃ、うまく回らなくなっています。昔は、自分のところだけ変えて何とかなったけれど、今はいろんな組織を一斉に変えないとダメ。一斉に変えるとなると、「皆さん、こうしましょう!」と主張しないといけない。
問題解決もそうなんだけれど、皆で共有認識を持って「解決しよう!」と力を合わせないといけない。それをキチンと説明して人を動かすために、経験でも勘でも脅しでも、泣き落としでもダメ。
人を説得するために「論理的な思考」が必要になるんです。それで、ロジカルシンキングが流行してきたわけです。そして、その道具として図解というのがあります。
これから、益々必要なスキルとなります。例えば、課長。怒っていればいい時代があったかも知れないけど、今は「チェンジエージェント」ですからね。求められているのは、自分の頭で考え、仕事を改善・改革していける力を持った人です。
言葉で考える、図にして考える、その違いは
例えば、これは(※図例2)、インフレと需要と供給という経済学の問題について、どういう仕組みで何がどう動くかという関係をチャートにしたものです。いろんな要素がありますよね。線が引いてあるのは、それらの間に関係があるわけですよ。普通の経済学の説明ではこうなります。例えば「資産」という要素がバラバラに出てきて、分からないですよね。結局、資産に関係することを考えようとする時に、どこに書いてあるかさえすぐに分らない。ところが、図に書いてやると、これに関係あるのはどことどこ、というのが分る。考えなくちゃいけない問題の範囲を限定できるわけです。
---問題点が、自ずと明らかになるということですね。
あと、本当はここにあるんだけど、頭だけで考えていると分らないケースに、「見落とし」というのがあります。それを、図にすることで見落としていることに気付くことがあります。
これは(※図例3)、織田信長の話を「マトリックス」にしたものです。信長は犯罪者を処刑しました。それは治安維持の意味を持っていた。だけど、犯罪者ではない自分の家の女中も処刑しっちゃったこともある。だから家臣は恐れおののいた。
この話を図に書いて並べてみると、基本的には、同じ構造になるはずです。図に書くっていうのは、ある基準で並べることなんで、その基準にのっとって並べてみると、見落としているとこが空白になって目立つんですよ。ここに入るのは、信長の“残忍さ”です。
---欠落している要素を見い出すのは、高度なテクニックになりますよね。
並べさえすれば、そんなに高度じゃないです。練習は必要になりますが。
よくできた図解には、人が頭の中で漠然と思い描いている「構造」にカタチを与えて、はっきりと意識できるようにしてくれます。そうすると、欠落ポイントが分かりやすくなって、いろんな可能性も検証しやすくなるというメリットがあるんです。
---開米さんご自身も、図を書くことで発見したこととかありますか?
はい。例えばこれは(※図例4)、思考法の位置付けマップです。図解技術の位置付けマップと思ってもらってもいいです。
2年位前から、図解のなんとかという本がたくさん出てきてますが、そういうのは企画プレゼン系で使う図解の話で、この辺。僕のはココなんですよ。分析運用する人が使う図解の技術。ロジカルシンキングとかクリティカルシンキングとか言われている分野は、この辺です。この座標軸でどこに位置するんだろうと並べてみたら、この辺がポッカリ空いている、ということに気が付いて。
---これは、いけるぞと。
まあ、そうですね。図解ブームがあって、その中でこれまで自分が考えきた図解技術が「いけるぞっ!」と思ったものの、(僕が考えている領域に)どういった名前を付けたらいいか、というのが難しかったですけれど。図解と言った瞬間に、これまでにあるこちらの方(企画プレゼン系)のイメージがついちゃいますから。
では、その技術をマスターするには? 次ページへ続きます>>