バリアだらけのマンション室内環境
マンションはバリアだらけ(?) |
もし読者の皆さんのご家族が突然に、車イスを必要とする身体になったらどのように対応しますか?自走用標準型車イスは横幅が65cm程度、縦幅(全長)は100cm程度、アルミ製の軽量タイプでも10kg超の重量になります。室内(専有部分)の廊下幅は内のり(実寸)で80cm程度がほとんどだと思いますので、途中で方向転換は不可能ですし、洋室やリビングに入る際に「外開き」のドアになっていると、進行方向によっては一度後退してからドアを全開にして進入することが求められます。引き戸(=引き違いの扉)になっていれば、こうした手間も不要なのですが、和室の襖(ふすま)以外は、洋室やリビング、さらにトイレや浴室(脱衣所)に至るまで、開き戸なのがほとんどでしょう。
いつでも車イスを押してくれる介助者が存在し、四六時中、面倒をみてくれるのであれば心配材料にはならないのかも知れませんが、“自己決定”に基づく自立した生活を送るためには過保護な対応はマイナス要因にしかならず、かえって自立心を損なう危険さえあります。そこで、今のうちから何かしらの対策を立てておくことが求められるのです。
在宅介護のあるべき姿とは
在宅介護における介護者は家族であることが圧倒的に多く、高齢者の多くは介護が必要になっても「住み慣れた環境」=「自宅」で生活したいと望んでいます。ところが少子化や核家族化により家庭内の介護力は低下し、もはや家族だけで介護を支えることが困難になっています。社会全体で介護支援を行なうべく平成12年4月から介護保険制度がスタートしましたが、ふたを開けてみれば問題点ばかりで十分に機能しているとは言えない状態で、そのため、すべてのしわ寄せが家族に降りかかり、心身のストレスにつながっています。50歳の息子が80歳の実母を介護する状態が日常化する日も決して遠くないのです。
そこで、「バリアフリー」や「ユニバーサルデザイン」といったハード面(建物)の改修によって介護環境を改善させる方法が最も一般的で、段差を解消し、手すりを新設することで家庭内事故の防止にも役立ちます。
さらに、ソフト面での施策も忘れてはいけません。在宅介護は、家族間の人間関係や介護への意識によっても必要な介護方法が異なり、また、経済状況や高齢者の心身状況によっても対応が変化するだけに
○高齢者の自立支援と自己決定を尊重する ○個々の価値観やライフスタイルを考慮し、生活の自立性を援助する ○安全な生活空間を確保し、予防に力点を置いた介護を心がける ○かかりつけの医師やホームヘルパー、ソーシャルワーカーなどと連携しながら支援する |
と、いった観点をもって介護に当ることが欠かせません。
しばしば、諸外国にくらべ日本の住宅は貧しいといわれますが、こうした「貧しさ」は室内の狭さ(面積)だけではなく、「介護する人」並びに「介護される人」にとっての快適性の欠如をも意味しているのではないでしょうか?健常者には何の不便を来たさなくとも、障害者や要介護者に不便であれば、迫りくる高齢社会に順応できているとは言い難いのです。これを機会に、在宅介護のあるべき姿について考えてみましょう。