2004年4月に、本サイト「賢いマンション暮らし」上の「あなたの一票」で、読者の皆さまに『あなたは定価でマンションを買いましたか?』を投票してもらいました。データは1年前のものですが、現在も分譲マンションの供給過多は変わらない中、あらためてアンケート結果を振り返ると、その数字には驚かされるものがあります。そこで今回は、分譲マンション値引きの現状を見てみましょう。
100世帯に10世帯は未契約
まずは、分譲マンションの売れ行きからです。不動産経済研究所による2005年上半期(1~6月)の「首都圏マンション市場動向」によると、首都圏(1都3県)では分譲マンションの契約率は90.3%という結果が出ています。同調査は6ヵ月間(上半期)に限ったデータですが、仮に年換算してみると、2005年(1月~12月)での供給予想戸数8万6500戸の約1割に相当する8600戸程度が売れ残る計算になります。「即日完売」「完売御礼」といったフレーズが踊り、マンションブーム花盛りといった印象がある一方で、平均値で見た場合、“100世帯に10世帯は未契約”であることが分かります。
<首都圏分譲マンション売れ残り戸数(2005年6月末現在)>(単位:戸)
2005年発売戸数 | 2005年分残戸数 |
契約率(%) |
2004年分残戸数 | 98~03年分残戸数 |
合 計 |
|
都区部 | 13164 | 1316 | 90.0 | 483 | 102 | 1901 |
都 下 | 4518 | 531 | 88.2 | 149 | 33 | 713 |
神奈川県 | 10869 | 957 | 91.2 | 551 | 27 | 1535 |
埼玉県 | 5387 | 560 | 89.6 | 120 | 4 | 684 |
千葉県 | 4460 | 369 | 91.7 | 92 | 17 | 478 |
首都圏 | 38398 | 3733 | 90.3 | 1395 | 183 | 5311 |
もちろん、1割相当が売れ残り続けるわけではなく、クリアランスとなっても分譲マンション業者は“色々な方法”で販売していきますが、その際、主に以下のような方法を用います。
・お友達紹介キャンペーン!ご成約いただくと10万円をキャッシュバック!!
・敷地内駐車場を(本来は抽選なのに)優先案内する
・モデルルームで使用した家具をプレゼント
・諸費用の一部あるいは全部を売り主が負担する
・本体価格そのものを一部値引きする
37%の人が何らかの恩恵を受けている
営業する側にとっては、いつまでも売れずに残っているよりは多少の持ち出し(値引きなど)があっても早く処分してしまいたいのが本音であり、こうした販売心理が上記のような“禁じ手”に走らせるのです。今回、読者からの投票結果(下記グラフ)をみても、37%の方が物品あるいは金員による恩恵を受けており、売らんがためには形振り(なりふり)構っていられない危機感が垣間見られます。「即日完売」を謳(うた)う分譲マンション業者の「プライド」や「見栄」が音を立てて崩れていくのです。
<あなたの一票 「あなたは定価でマンションを買いましたか?」>
【アンケート調査方法】 2004年4月3日~4月30日の間に、本サイト「賢いマンション暮らし」において、「あなたの一票」として読者に投票してもらう。有効回答数は106件。 |
誰にも口外しないで下さい
そして、“値引き後”のお約束が「誰にも口外しないで下さい」という営業マンのひと言です。こうした事実が明るみに出ることは、販売業者のイメージ悪化やクレームの原因となるからです。そこで、ほとんどの場合、単なる口約束だけではなく「念書」や「覚書」を取り交わし、売り主と値引きなどを受けた契約者の間(だけ)で裏取引を行ないます。たとえば
『私は、第三者に対して一切(値引きについて)口外しないことを約束いたします。万一、口外した場合には、本物件を正規の価格にて購入するものとし、御社(=分譲マンション業者)に損害が発生した際には、一切、私の責任と負担において処理いたします』
などといった内容が一般的でしょう。権利義務関係を書面化しておくわけです。その他、「定価で購入した契約者」と「恩恵を受けた契約者」が同じ屋根の下でマンションライフを始める中、居住者同士の人間関係に亀裂を入れる不安材料にもなりかねないだけに、他の居住者への配慮も欠かせません。うっかりしゃべってしまったとしたら、正規の価格で購入した方にとって(値引きの事実は)気分のいいものではないからです。
こうして見ると、他の居住者との摩擦を避ける意味でも、何らかの恩恵を受けた方には、そのマンションに住み続けるかぎり、値引きを隠し通す忍耐が求められるのかも知れません。恩恵を享受するには、それなりの“覚悟”も必要なようです。