マンションでペットを飼う人は少なくない
ペットの社会的地位が向上し、また、“いやし”の効果なども認められつつあることから、マンション(集合住宅)で犬や猫を飼うことへの理解は深まりつつあるように思います。しかし、現実に立ち返ってみると、ペット飼育者は今もって肩身の狭い思いをさせられており、総じて、マンションでのペット飼育は歓迎されていないのも事実です。

同じマイホームでありながら、一戸建てでは何ら制約を受けないのに、マンションでは厳しく規制されてしまうわけです。なぜ、このような違いが生じるのでしょうか?実に、理不尽といわざるを得ません。そこで、東京地裁で争われたペット飼育訴訟をもとに、その原因を考えてみたいと思います。

「人格権の過度の侵害とはいえない」  東京地裁判決


今回、裁判の舞台となったのは東京・江東区のとあるマンションでした。このマンションでは新築当初からペット飼育を禁止していたのですが、隠れて飼っている居住者がいたことから平成14年に管理規約を改正。それ以後、2年間の間にペットを手放す規則を追加しました。ところが、期限が過ぎた後(2年後)も数人の居住者がペットを飼い続けたため、管理組合から訴えられることとなってしまいました。改正された管理規約は有効に機能しているため、規約違反とみなされてしまったわけです。

被告(飼育者)は「ペットは人間生活に極めて重要な存在であり、危害を与えない動物まで一律に禁止するのは人格権を侵害している」と主張しましたが、結果は被告の言い分が退けられ、原告(管理組合)の請求が認められました。「飼育禁止を望む居住者が多数おり、ペットを飼うことは区分所有法に定める“共同の利益”に反し、人格権の過度の侵害とはいえない」というのが理由です。

マンションは1つの建物を複数の人が所有し、そこで生活するという特質があります。そのため、居住者1人ひとりの得失(損得)の他にマンション全体としての得失も同時に存在し、この後者の得失のうち「得」の部分を「共同の利益」といいます。「マンション全体としてみれば……」という考え方だと思ってもらえれば結構です。そして、当該裁判ではペット飼育は管理組合にとって「不利益」=「共同の利益に反する」と判断されたのでした。

原因は飼育者同士のトラブル


今もって、マンションでのペット飼育は受難の時代といえそうですが、冒頭でも言及したように、一戸建てでは問題にならないペット飼育がマンションでは訴訟にまで発展するほど大問題とされるのはなぜなのでしょうか? 理由は簡単で、ペットトラブルの原因が「ペットそのもの」ではなく「人間自体」にあるからです。

つまり、これまでマンションとペットは合い入れない関係のように考えられていましたが、実はマンションにペットが合わないのではなく、飼い主が規約を守らなかったり、マナー違反することで居住者間に摩擦が生じていたのです。ペット問題として扱われてきたトラブルの多くは、突き詰めれば人間同士のトラブルだったわけです。

それが証拠に、他の居住者が無駄吠えする犬に向かって、直接「うるさいから吠えるな!」と文句を言うことはありません。必ず飼い主に注意します。ペットに対して「管理規約を守れ!」と怒鳴る人もいないでしょう。すべてのトラブルは、飼い主に帰属するからです。また、一戸建てではトラブルにならないのも、一戸建てという住居形態とペットの相性がいいからではなく、一戸建てでは住人すべてが飼い主同然のため、そこに住む人間同士でトラブルを起こすことが少ないからです。要は“人ありき”なのです。

ということは発想を逆転して、人間(マンションの居住者)同士が良好な関係を築くことさえできれば、マンションであっても一戸建て同様、ペット飼育はうまくいくのではないでしょうか。裁判など無用の長物のはずです。ペット問題がマンション3大トラブルの1つに挙げられることは、それだけ、マンションで暮らすことがいかに難しいかを露呈した証(あかし)なのでしょう。あらためて、「コミュニケーション」の大切さを実感させられた次第です。


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