その偽装手口は加熱試験の際、試験体に細工をして性能を過大評価させるというもので、同社は06年10月に問題を把握しながら公表せず、今年の10月29日まで出荷を続けていたそうです。
折りしも先月、横浜では耐震偽装されたマンションが再び見つかり、また、今月には千葉県市川市に建設中の超高層マンションで、128本の鉄筋が不足していたことが明らかになりました。なぜか(?)似たような事件・事故は連続するもので、この流れが変わらなければ「もしかしたら、他にも……」と、悪い想像を掻き立てられてしまいます。これ以上、「住の安全」が脅かされることは避けなければなりません。そこで、マンションの火災対策はどうなっているのか?……今回は、マンションの防火性能を検証してみたいと思います。
マンションは火災に強い(?) 関東大震災の教訓が生きる
皆さんは、マンションの「定義」をご存じでしょうか? 本来、マンションとは中高層(3階建て以上)の鉄筋あるいは鉄骨鉄筋コンクリート製共同住宅のことで、大正12年(1923年)に起こった関東大震災による火災被害の教訓を踏まえ、燃えやすい木造住宅からの脱却を図ったのが起源とされています。というのも、大震災では揺れそのものよりも、火災による二次被害で多くの犠牲者を出しました。その数9万人超。およそ10万人とされる死者の9割が、火災によって命を落としたのでした。
そこで、燃えにくい建材による住宅建設が喫緊(きっきん)の課題となり、鉄筋(鉄骨)とコンクリートを組み合わせた建築工法が確立されるようになりました。ここに、「マンションは火災に強い」と言われる所以(ゆえん)があるのです。
それから90年、現在ではすっかり主要な居住形態となったマンションですが、火災時の安全対策はどうなっているのか、ここから本題に入ることにしましょう。住宅性能評価の基礎となる「住宅性能表示基準」では、「火災時の安全に関すること」として、以下の2大目標を掲げています。
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本来、火災を防止するには居住者が常日頃から気をつけ、出火させないことが最も重要となります。しかし、とはいえ人間である以上、注意には限界があります。24時間緊張し続けるわけにはいきません。そこで、火事になってしまった場合でも「生命」と「財産」は火災から守ろうというのが、当該評価基準の狙いです。
一体、マンションにはどのような防火対策がなされているのか? 次ページで、具体的な内容をご紹介します。