漏水トラブル 対応のまずさが人間関係をより悪化させる
今回の加害者は4階(406号室)に住むAさんです。突然、管理人から「下階住戸(306号室)の天井から水が漏れている」ことを告げられ、初めて漏水トラブルが発生していることを知りました。
そこで、まずは306号室におじゃまし、被害状況をチェック。確かに、天井からポタポタと液体が流れ落ちていることは確認できました。しかしAさん、まったく思い当たる節がありません。床に水をこぼすような不注意は身に覚えがなく、漏水の原因が本当に自分にあるのか、確信を持つことができなかったのです。そのため、しばらく様子を見ることにしました。
ところが、この行動が災(わざわ)いの始まりとなりました。何もしようとしないAさんに対し、Bさん(306号室の世帯主)の怒りは高まっていったのです。
Bさんによると、天井からのポタポタは朝と夜に激しさを増したそうです。逆に、日中と深夜は漏れが止まっていました。原因究明が最優先と、管理会社の設備担当者を交えた三者会合も行いました。しかし、原因は特定できず、いたずらに時間だけが過ぎて行きました。そのため、Bさんご家族のいらだちはピークに達し、「どうなっているんだ!」「いつになったら止まるんだ!」と、憤りの声は増すばかりでした。この瞬間、住民トラブルの醜(みにく)い姿がさらけ出されることとなったのです。
原因はユニットバスの一部破損 割れ目から漏水する
さすがに、様子見気分ではいられなくなったAさん。ついに406号室の床をはがして、床下を調査することにしました。もちろん、この費用はすべてAさん持ちです。渋々と了承するAさんの顔が、今でも忘れられません。
しかし床をはがすと、すぐに原因は特定できました。何と、Aさん宅のユニットバスに一部、亀裂が入っていたのです。入浴時に、この割れ目からお湯が漏れ出していたことが、306号室の天井を濡らす原因となっていました。Aさん宅では朝と夜の1日2回、入浴していましたが、なぜ、3階の漏水が朝と夜に集中していたのか?……原因が解明されたことで、“つじつま”が合ったわけです。
今回の漏水トラブルは、幕を閉じるのに約3カ月を要しました。マンションでの漏水トラブルは実に厄介で、原因がはっきりしないことも少なくありません。この間、被害者はじっと我慢していなければならないだけに、その心情は察するに余りあります。
同じようなトラブルを引き起こさないためには、ご自宅の水回りを防水仕様にする、床下の配管を新しいものに交換するなどの対策が有効です。また、万が一のために損害保険に加入しておくのも一法でしょう。起こってからでは手遅れです。日頃からの準備こそが、「ご近所トラブル」を低減させる良策となるのです。