マンション購入術/マンション購入の失敗・トラブル

第二のヒューザーを生まない法律誕生(1)(2ページ目)

来年10月に第二のヒューザーを生み出さないための新法が施行されます。その名も「住宅瑕疵担保履行法」。売り主が倒産しても、買い主は瑕疵担保責任を請求できる消費者保護のための法律です。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

供託所への「供託」または「保険加入」を義務化


第二のヒューザーを生まないための法律は、正式名称「住宅瑕疵担保履行法」といい、2007年5月30日に公布済み、来年2009年10月に施行される予定です。このページでは社会背景や全体像を説明し、各論は次回「後編」で詳述したいと思います。

新法の概要をひと言でいうと、新築住宅の売り主など(宅建業者や建設業者)が我々消費者に住宅を引き渡す際、その売り主などは保証金を供託所に供託するか、あるいは保険へ加入するよう義務付けたのが、今回の法律です。

 供 託 新築住宅の売主などに対し、住宅の供給戸数に応じた保証金の供託を義務付ける
 保 険 個々の住宅について保険契約を締結し、瑕疵により損害が発生した場合には保険金が支払われる


くどいようですが、再度、姉歯事件を思い出してみましょう。「グランドステージ」シリーズのマンション分譲主・ヒューザー(現在は破産)は、売り主として民法上の瑕疵(かし)担保責任を常に負っていました。瑕疵担保責任とは、住宅に瑕疵(欠陥)があった場合、買い主は売り主に損害賠償と契約解除の請求ができるという約束ごとのことです。姉歯ショックにより「耐震強度が不十分なマンション」=「欠陥住宅」の売り主として、ヒューザーは買い主に損害賠償責任を負うことになったのでした。

しかし、被害者(買い主)の仮住まい費用から建て替え資金まで、補償額は膨大な金額になりました。とても一企業で対応できる額ではありませんでした。それどころか、自社の経営存続すら危うくなり、最終的にヒューザーは破産してしまいました。法律で売り主が取るべき責任がはっきりと法制化されていても、結局、実行(=被害者救済)するだけの資力がなかったヒューザーは何の役にも立たなかったのです。ヒューザーに十分な救済能力があれば、マンション住民の苦悩はかなり和らいだに違いありません。

そこで、同じことが繰り返されないよう、新築住宅の売り主などに瑕疵担保責任履行のための資力確保を義務付けたのが「住宅瑕疵担保履行法」です。万が一、売り主などが倒産して瑕疵担保責任を負えなくなっても、供託した保証金の還付、あるいは、加入した保険からの保険金によって買い主が保護されるようにしたのです。

来年2009年10月以降に引き渡される新築住宅から、同法は適用されることになっています。消費者保護に向けた新たな第一歩として、その効果が期待されます。


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