「特別の影響」を及ぼすかどうかが、1つの判断材料
そして、こうした敷地内駐車場をめぐる訴訟では、しばしば区分所有法にある「特別の影響」が争点として取り上げられます。まずは、次に紹介する判例で「特別の影響」とは何か、そのイメージをつかむことから始めましょう。
【裁判の概要】 敷地内駐車場の使用料に関し、管理組合が新たに規約を設定して料金増額の集会決議を行った。そして、駐車場使用者に対して増額後の使用料を請求したところ、規約設定の無効を主張して支払いを拒否。そのため、管理組合が駐車場使用契約を一方的に解除した。 (最高裁判所 平成10年10月30日判決) |
当該裁判では、(1)駐車場使用契約の解除が有効かどうか、(2)使用料増額決議が区分所有法の「特別の影響」を及ぼす場合にあたるか否かについて争われました。そして結論として、(1)契約解除の効力は生じないと解される、(2)特別の影響を及ぼすものではない……との判決が言い渡されました。
区分所有法には区分所有者間の利害を調整するため、「規約の設定、変更または廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承認を得なければならない」と定められています。「特別の影響」とは具体的に、「規約の設定、変更等の必要性や有用性と、これによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき範囲を超える程度の影響」のことを指します。
最高裁は本件で、「増額の必要性及び合理性が認められる場合」、かつ、「増額された使用料が当該区分所有関係において、社会通念上、相当な額であると認められる場合」には、特別の影響を及ぼさないと結論付けています。一般的に、使用料の増額は駐車場利用者に不利益をもたらすものですが、十分な理由があり、かつ、影響が限定的であれば、値上げは容認できるとの見解を示したのでした。