顧客の選び方……2つの視点とは
顧客の選び方とは
1. 顧客の収益貢献度で選ぶ視点
2. 顧客によるブランドコミットメントで選ぶ視点
私は2つの視点が重要であると考えます。
1.顧客の収益貢献度で選ぶ視点
「20:80理論」という言葉をお聞きになった方もいらっしゃるかと思います。文字通り2割の上位顧客が売上の8割を占めるというセオリーです。
顧客の属性データや購買データを把握していれば、容易に分析できます。
例えば、あるスーパーで上位顧客とそうでない顧客との収益貢献度について考えてみましょう。
<上 位 顧 客>
週3回スーパーでお買い物。1回当の顧客単価は4,000円。
<そうでない顧客>
週1回スーパーでお買い物。1回当の顧客単価は2,000円。
1年間の購入金額を比較すると…
<上 位 顧 客> 4,000円×3回×52週=624,000円
<そうでない顧客> 2,000円×1回×52週=104,000円
なんと6倍近くも購入金額が違うのです!
さて、あなたはどちらの顧客に対して、重点を置きますか?
答えは明らかなのですが、意外にも“平等に”接しているケースが多く見られるのです。
それでは、もう1つは何でしょうか?
2.顧客によるブランドコミットメントで選ぶ視点
ブランドコミットメントとは、「価格以外の要素で選ばれる価値への共感」と翻訳できます。少し難しいので、先ほどのスーパーを例に解説します。
先ほどのスーパーで年間624,000円購入している上位顧客がいましたが、この顧客に次に述べる2つのタイプがいたとします。
<上位顧客A>
このスーパーはこのあたりで一番安いから行っているの。
<上位顧客B>
このスーパーは他にない品揃えで、店員も親切だから行っているの。
仮にこのスーパーの近所に、より価格の安さを売り物にした別のスーパーができたら、どうなるでしょうか?
<上位顧客A>
隣に安いスーパーができたから、これからはそっちで買おう。
<上位顧客B>
一度新しいスーパーに行ったけれど、今までいっていたスーパーのほうが他にはない品揃えで店員さんの感じもいいから、買うスーパーは変えないわ。
上位顧客Bは、「品揃え」や「店員の対応」といった価格以外の要素への共感度が高い顧客なのです。こういった顧客は、ブランドコミットメントが高いと云えます。ブランドコミットメントが高い顧客は他に浮気しにくいので、企業にとってはありがたい顧客と云えるでしょう。
これに対し、上位顧客Aは購入結果の上では収益貢献度が高かったのですが、価格のみにつられていたため、容易に流出してしまったのです。
ちなみにブランドコミットメントを図る手法としては、コンバージョン・モデル という調査手法がありますので、興味のある方はご覧下さい。
顧客を4タイプに分けて捉える
これまでに顧客を選ぶ2つの視点について解説しましたが、その視点に沿って、4タイプの顧客に分類することが可能になります。(1) 収益貢献度が高く、ブランドコミットメントも高い顧客
(2) 収益貢献度は高いが、ブランドコミットメントは低い顧客
(3) 収益貢献度は低いが、ブランドコミットメントは高い顧客
(4) 収益貢献度が低く、ブランドコミットメントも低い顧客
最も注目すべきは、(1)の顧客です。価格以外のどのような要素で共感を受けているのかを正確に把握し、その要素を更に強めるマーケティング展開が重要です。
(2)の顧客については要注意です。早急にブランドコミットメントを高める方策を考えましょう。
(3)の顧客は、収益貢献度が上がらない理由をつきとめ、関連購入やプラスワン購入などで購入金額を上げる方策が望まれます。
(4)の顧客については最も流動性がありますが、去られてもそれほど痛手にはなりません。この4タイプのなかでは、あまり重点をかけるべき顧客ではありません。
限られたコストと組織能力のなかで、どの顧客に投資をすることが、企業のブランド力と収益力を高めることにつながるのか?
21世紀は顧客もポートフォリオで捉える時代なのかもしれません。
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