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SF小説の陽電子頭脳が描いた世界とは?(2ページ目)

アシモフの短編集で描かれた陽電子頭脳。SF小説上の架空の技術であるが、現在この陽電子が人間の生命に大きな影響を持ってきた。陽電子とはいったいどのようなものなのか。その実用化の現状は。

執筆者:木村 勝己


電子の反粒子

画像
    ヘリウム原子の構造図

 

原子核の中の陽子はプラスに帯電し、この周りをマイナスに帯電した電子が回転している。陽子と電子の電荷量は同数で均衡しているが、この電子がある衝撃で軌道を離れると自由電子となる。これが導体を通って移動すれば電子の流れつまり電流(電流の方向は電子の移動方向とは反対で定義)となる。

陽電子(positron)とは、電子の反粒子であり正の電荷を持っている。しかしこれ以外の質量、電荷の絶対値などの物理量は電子と同じものである。陽電子と電子が出会うと消滅し、双方の質量分に相当するエネルギーが光子(2本のγ線)となって放出される。

この陽電子が世界で最初に発見されたのは宇宙線の観測によるものであった。人工的には、原子炉で放射性同位元素を作り陽電子を得る方法や、他の方法が研究されている。

陽電子断層撮影装置


陽電子利用の実用化も進んでいる。それはPET(Positron Emission Tomography)においてである。陽電子断層撮影装置といわれるもので、医療診断の分野で実用化されている。全身の癌を一度に画像として表示し、精度の高い診断を行うものである。

PETの検査ではまず陽電子放出核種を人体に投与する。これは体内で崩壊して1個の陽電子を放出し近傍の原子にあたる。陽電子と原子の電子が出会った時に放出されるγ線(ガンマ線)を、人体の周囲を取り巻くように配列されたγ線検出器で集めて、コンピュータで三次元画像化する。

そして癌の早期発見には次ページのような仕組みがある。
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