電子の反粒子
ヘリウム原子の構造図
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陽電子(positron)とは、電子の反粒子であり正の電荷を持っている。しかしこれ以外の質量、電荷の絶対値などの物理量は電子と同じものである。陽電子と電子が出会うと消滅し、双方の質量分に相当するエネルギーが光子(2本のγ線)となって放出される。
この陽電子が世界で最初に発見されたのは宇宙線の観測によるものであった。人工的には、原子炉で放射性同位元素を作り陽電子を得る方法や、他の方法が研究されている。
陽電子断層撮影装置
陽電子利用の実用化も進んでいる。それはPET(Positron Emission Tomography)においてである。陽電子断層撮影装置といわれるもので、医療診断の分野で実用化されている。全身の癌を一度に画像として表示し、精度の高い診断を行うものである。
PETの検査ではまず陽電子放出核種を人体に投与する。これは体内で崩壊して1個の陽電子を放出し近傍の原子にあたる。陽電子と原子の電子が出会った時に放出されるγ線(ガンマ線)を、人体の周囲を取り巻くように配列されたγ線検出器で集めて、コンピュータで三次元画像化する。
そして癌の早期発見には次ページのような仕組みがある。