斬新な“赤”で大ヒットしたシャープのヘルシオ
製品の品揃えは顧客を引きつける一つのポイント。 |
ただ、一つの製品でさえ開発することは困難を極める上に、複数の製品を揃えることは企業にとって多大な負担となることは間違いない。
そこで比較的手間もコストも掛けずに製品のバリエーションを増やすことができる手法がカラーのバリエーションを豊富にすることだ。
より多くのカラーを揃えれば、製品は同じだとしても、より多くの消費者を引き付けることが可能になる。また、他社製品にはないカラーを自社製品に採用することにより、色の面からの製品差別化も可能になる。
たとえば、シャープの『ヘルシオ』。
ヘルシオは2004年9月、100度を超える高温水蒸気で加熱調理するスチームオーブンとして発売後大きな反響を呼んだ。ヒーターやマイクロ波を使わずに調理することによって、食材の栄養を壊すことなく、食品が持つ本来のおいしさをそのままに調理できるというふれこみで、10万円を超える高価格にもかかわらずおよそ1年で10万台を超える大ヒット商品となった。
このヘルシオのヒットの陰に実は斬新なカラーの採用があったのだ。
ヘルシオのイメージカラーは斬新な“赤”。通常、オーブンと言えば無難なホワイトやシルバー系が大多数を占める。“白物家電”と呼ばれるように台所用の家電製品はホワイトやそれに近いシルバーが企業にとっても失敗の少ないカラーと言える。
ところが、敢えてシャープはこの“白物家電”に斬新な“赤”で勝負を賭ける。上層部は白物家電として、これまでにない色遣いで果たして大丈夫なのかと戸惑いを見せたが、マーケティング担当者は入念なリサーチの結果、他のインテリアとの調和で「赤は選ばれやすいカラーだ」との仮説を立て“赤”のヒットを予感していた。
担当者の読みはずばりと当たり、“赤”のヘルシオはおよそ1年で4万台を売り上げるなど、これまでの常識を覆して、製品の差別化に見事成功した。
次ページでは、色による業績拡大を図る“カラーマーケティング”の成功要因について分析していこう。