衰退期を迎えた商品を見事に蘇らせるマーケティング戦略とは?
シュールなデザインだが『人間失格』ほどのインパクトには欠ける『カラマーゾフの兄弟』の表紙。 |
それでは今回も同じ手法で古典的な名作をヒットさせたのでしょうか?
実際にカバーを見ていただければわかりますが、『カラマーゾフの兄弟』はシュールなデザインのカバーとはいえ、『人間失格』ほどのインパクトのあるカバーではありません。
カバーに答えがなければ、そのヒットの秘密はどこにあるのでしょうか?
そうです。そのヒットの秘密は商品の改良にあるのです。前回の記事の中で衰退期を迎えた商品は、商品を改良するか、新たな市場を開拓することによって寿命を延ばすことができるとお伝えしましたが、将に今回の『カラマーゾフの兄弟』は現代人でもすんなりと理解できる新訳を施し、より多くの人に適した作品に改良を行ったことがヒットに繋がったのです。
特筆すべきは第4巻までの巻末にある読書ガイドと訳者の見解を述べた第5巻でしょう。『カラマーゾフの兄弟』は世界的な文豪ドストエフスキーが遺作として渾身の力を振り絞って描いた超大作だけあって難解な作品としても有名です。事実、日本においても“謎とき『カラマーゾフの兄弟』”という書籍が新潮社から出版されていることからもわかります。
このような難解な文学を理解してもらうために、作品が創られた時代背景を説明したり、専門家の観点から難解な部分をわかりやすく解説したりすることにより、初めて『カラマーゾフの兄弟』に触れる読者にとってもすんなりと物語に没頭できる環境を提供したことが爆発的なヒットを記録した要因となったのです。
次のページではマーケティングの観点から更に『カラマーゾフの兄弟』大ヒットの秘密を掘り下げていきましょう。次ページへお進み下さい!