マーケティング/マーケティング事例

売行好調なのに業績が悪化するその訳とは?(2ページ目)

通常企業はマーケティング戦略が功を奏して売上が上がればうれしい悲鳴を上げるもの。ところが中には困る企業も存在します。なぜ売上が上がって困るのか?そんなマーケティングのミステリーをお届けします!

安部 徹也

執筆者:安部 徹也

マーケティング戦略を学ぶガイド

幸楽苑、その業績不振の原因とは?

業績不振の3つの理由を発見した!
新井田社長は業績不振の原因を3つに結論付けました。一つは値下げによって顧客の60%が注文するようになった中華そばの影響で原価率が上昇した上に、顧客単価が下がったこと。二つ目は知名度の低い中部や関西に70店舗も出店するなどそれまでの年40店舗に比べて急激な出店に伴って店舗の質が低下し、赤字店舗が続出したこと。そして三つ目は巨大化したことにより本部と店舗の交流が無くなったことによる社員のモチベーションの低下です。

これらの問題点を一つ一つ解決することによって、幸楽苑は最終利益で赤字を見込んでいた2007年3月期を1億円の黒字にまで回復させることができたのですが、今回はマーケティングの観点から下がった顧客単価をどのように回復していったかを見ていくことにしましょう。

メニューの配置で顧客は注文を変える

まず、返り咲いた新井田社長が取り組んだのはメニューの改定でした。このメニューの改定には二通りあります。一つはメニューの変更。そしてもう一つはメニューの“見せ方”の変更です。それまで、幸楽苑では餃子二皿にライスのセット、もしくは餃子一皿におにぎりの二個セットが麺類を頼めば300円という非常にお得なセットを提供していました。つまり中華そばと餃子二皿にライスがついてたったの590円だったのです。

新井田社長就任後はこのセットを廃止して、割引率が低くなるメニューに変更しました。また、メニューにとんこつラーメンやカレーを加えるなど、お客様が選べるバラエティを一層充実させたのです。

加えてメニューの見せ方にも工夫をこらしました。それまでは290円の中華そばを表紙や、メニューの上の方に配置していたのですが、表紙は390円の冷やしそばに変更し、メニューではとんこつラーメンを始めとしたお薦め品を上に配置することに変更したのです。これは新井田社長のこれまでの外食産業の経験からお客は必ず上からメニューを見ていくので、上にある商品の方が注文される確率が高いということを知っていたからです。

果たしてこのメニューの変更は功を奏したのでしょうか?その結果は次ページでお伝えします!
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