大ヒットの缶コーヒー。その裏側には意外な戦略があった! |
そんな時に1杯のコーヒーで目を覚まして仕事にとりかかるビジネスパーソンも多いのではないでしょうか?そのような朝の1杯のコーヒーに着目したのが、アサヒ飲料から発売されている朝専用の缶コーヒー「ワンダモーニングショット」。最近デザインもリニューアルされ益々人気に拍車がかかっています。その爆発的なヒットの背景はこだわりの原料・製法だけでなく、「朝専用」とうたったところにあるようです。そのマーケティング戦略の裏側を探ってみると・・・・・・
「朝専用缶コーヒー」そのヒットの秘密は?
2002年10月の登場から「ワンダモーニングショット」は朝専用缶コーヒーとしてその地位を不動のものにしてきました。原料に香りとコクのあるアラビカ種の新豆を100%使用し、独自で開発したコーヒー本来の豊かでよい香りを逃さない製法や、渋みを抑えたキレの良い後味を実現するモーニングロースト製法を採用するなど随所にメーカーサイドのこの缶コーヒーに賭けるこだわり、意気込みが伝わってきます。事実、この「モーニングショット」は発売以来現在でも缶コーヒーでは異例の月間1000万箱(1箱30本)以上の販売実績を誇っているそうです。しかし、そのヒットの秘密を分析してみると、要因はそのこだわりの原料や製法だけではないようです・・・・・・市場を狭めたのに売上が上がる!?
マーケティングでは市場を絞り込むことによって売上を拡大できる場合があります。このような戦略はセグメンテーション(市場の細分化)と呼ばれています。セグメンテーションとは既存顧客や潜在顧客群を性別・年齢・婚姻・家族構成・職業・年収などの属性や行動様式などから分類し、細分化していくプロセスですが、「モーニングショット」の場合は「時間」という切り口から市場の絞込みが行われたのです。「時間」で市場を絞り込む場合、生活者の消費活動を「朝」「昼」「夜」という切り口で細分化するのですが、今回アサヒ飲料が着目したマーケットは「朝」でした。
市場を「朝」に絞り込む理由とは?
時間を軸にした市場の絞込みは何も「モーニングショット」が初めてではありません。過去を遡ればキリンビバレッジの「午後の紅茶」があります。「午後の紅茶」は午後という時間を軸にした市場の絞込みを行って、「午後ティー」として今でも多くの人に愛されるロングヒット商品です。「お茶の時間」と言えば、やはり仕事が一服して休憩を取る午後が一般的であり、通常の飲料メーカーも時間による市場の絞込みを行う場合は「午後(昼)」と考えるのが普通ではないでしょうか。ところが、「モーニングショット」はその名が示すように「朝」に目をつけました。自社の入念な市場調査を実施して、現代のビジネスマンは8割が朝型生活を希望しており、朝の必需品は「ネット」「メール」「缶コーヒー」という結果が出たからです。また、実際に缶コーヒーを飲むビジネスマンは朝に飲む人が40%に達するなど、缶コーヒーにとって「朝」は隠れた大市場だったことも明らかになったのです。このような市場調査を背景として、「モーニングショット」は当時目ぼしい競合相手のいなかった「朝」市場に先駆者として参入することにより、オンリーワンの存在を目指し、結果として成功できたと言えるでしょう。
競争に勝つ秘訣は、「いかに競合企業のいないマーケットを探すか」です。「モーニングショット」の場合は、このようにマーケットを絞り込んで競合のいないマーケットに商品を投入すれば成功するというマーケティング戦略の好事例と言えるのではないでしょうか。
それだけではない!まだまだ続くロングヒットの要因は次ページで。