企業は利益を得る目的で事業を行っている。市場ニーズに応える商品やサービスを提供し、その対価を得ることによって利益を上げている。企業には常に二つの課題がある。一つは、より市場価値の高い商品やサービスを提供すること。もう一つは、商品やサービスを市場に認知させ、より多く販売することだ。
営業職の仕事は、後者の課題に取り組むことだ。いくら品質の良い商品やサービスを提供できても、それだけでは売れない。商品やサービスを認知させ、購入するように説得する活動が必要だ。営業職はこの分野の専門家なのだ。
どのような業種であっても、企業である以上、営業職が必要である。そして、企業が発展していけるかどうかは営業にかかっている。現に、この不況の時代に伸びている企業は、例外なく営業力が優れているのだ。
営業職は企業の生命線なのだ。
● 営業職に求められるもの
営業職に求められるスキルは、営業職のタイプによって様々だ。しかし、どのような営業職においても、必須のスキルが二つある。
営業職に求められる一つ目のスキルは提案力だ。お客の隠れた問題を察知し、ニーズを喚起し、問題解決策として自社の商品やサービスを提案するスキルである。
「提案型営業」という言葉は、もはや一般的になったので、なじみのある言葉だろう。「提案力は提案型の営業に必要なんでしょ。御用聞き営業(ルートセールス)には必要ないんじゃない?」そう思っただろうか?実は違う。御用聞き営業にも提案力は必要なのだ。
それがなぜかは、優秀な御用聞き営業マンを見ると分かる。優秀な御用聞き営業マンは、ただ客先を訪問したりはしない。訪問すると必ず客先の情報を収集する。リサーチを続けると提案の余地を発見できる。
例えば、法人向け産業機器販売の場合、客先に自社商品の他に、競合他社の商品も導入されていたとする。この場合、定期訪問時に競合他社機器のリースアップ時期を聞いておく。そして、リースアップ時期が近づいてきたら、競合他社が提案してくる前に自社商品の情報提供を始め、リプレースの提案をしていく。優秀な御用聞き営業マンは、適切なタイミングに提案をすることで、取引を拡大するのだ。
営業職に求められる二つ目のスキルは、説得力(交渉力)だ。商品の購入がお客にとって有益であることを納得させ、お互いに得をする「不公平でない契約」をまとめるスキルである。
説得とは、相手に働きかけて態度や行動を変化させることだ。営業職の仕事は、説得を必要とする場面が多い。典型的な例が、お客に購入の決断をさせるクロージングの場面だろう。セールストークやプレゼンテーションによって、提案の内容がお客にとって有益であることを納得させ、購買行動を起こさせるには説得のスキルが必要不可欠だ。
ここでいう説得力には人間的な魅力も含まれる。外見、誠実さ、熱意、話し方、ユーモアなど。トップセールスマンには、人間的に魅力的な人が多い。魅力的な人には説得されやすいという心理学の研究結果(ハロー効果)もそれを裏付けている。
◎ 次のページでは、「営業職のやりがいは何か」を考えてみることにしよう。
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営業職研究シリーズ |
●第1回 営業職ってどんな仕事? |
●第2回 いろいろなタイプの営業職 |