体験談で語る
本売れた理由や、本が面白かった理由の中核的な理由は、テーマ・内容に決まっています。田村さんのレアケースな体験談や、家族への思いがあるからこそ、ここまでのブームになったことは間違いありません。なんですが、それだけだと言い切ってしまうと、そこから学べることが少なくなってしまいますので、ここでは書籍の書き方・スタイルに注目してみたいと思います。
一つ目のポイントは体験談で語るということです。自叙伝ですから、当然ながら田村さんの体験談が100%です。体験談のよいところは、ストーリーとして頭に入ってくるので、印象に残りやすいということと、もうひとつあります。それは、偉そうな感じがなくなるということ。
実例を挙げてお話ししますね。私はこの本を読んでから、確実に「ごはんを食べるときに噛む回数」が増えています。彼の体験談のなかで、食べ盛りのときにお腹がいっぱいになれるほど食べることが出来なくて、何度も何度も噛みながらご飯を食べることで、少しでも味わうことを楽しもうとしていたエピソードがあるのです。
これを読んで「うわー、僕ももっと食と向き合わないと」と感じたのです。もしこのときに、大上段に構えて「キミらはもっと、食に向き合わんといかんで」と偉そうに言われていたら、なんとなく抵抗したくなったことでしょう。
体験談というのは、メッセージが受け手に向けて発せられるのではなく、ただニュートラルに事実だけが述べられるわけです。それをどう受け取ろうと、受け手の自由。だから受け手は強制される感覚なく学べるわけですね。
次のページでは、ネーミングについてなど。